はいくる

「殺意の集う夜」 西澤保彦

「嵐の山荘」と聞けば、胸ときめかせるミステリファンも多いと思います。かくいう私もその一人です。閉ざされた場所、繋がらない連絡手段、次々死んでいく関係者たち・・・考えただけでワクワクしますよね。

とはいえ、この手のネタは様々な創作物で使われているため、生半可なアイデアでは読者を驚かせることはできません。ありきたりな「嵐の山荘」小説に飽きた方は、これなんてどうでしょう。<SF新本格ミステリー>という分野を確立した、西澤保彦さん「殺意の集う夜」です。

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ふとしたきっかけで、見知らぬ男女とともに嵐の山荘に閉じ込められた万理と園子。その夜、万理は不幸な偶然の積み重ねにより、なんと園子以外の全員を殺してしまう。唯一の味方であるはずの園子も、何者かの手で殺害されてしまった。一体誰が園子を殺したのか。時同じくして、下界で起きるホステス殺しの真相とは。謎が謎を呼ぶ殺人劇の裏には、驚愕の真実が・・・・・

 

作者本人が「ヤケクソで書いた」と公言する本作。なんと主人公が、不可抗力ながら居合わせた人々(総勢六人!)を殺してしまうという、度胆を抜く設定です。この時点で、「嵐の山荘」と聞けば誰もが考える、「関係者が一人一人殺されていき、最後に探偵役が推理する」という予想の斜め上をいっていますね。

さらに、主人公の殺人シーンの勢いの良さも凄いの一言。まるでドミノ倒しのようにバッタバッタと関係者を屠っていき、気付けば「ついうっかり」六人も殺していた・・・などという冗談のような展開が繰り広げられます。あまりにリズミカルなせいか、まったく恐怖やグロさを感じず、コミカルにさえ思えてくるから不思議です。

ですが、そこは新本格派の西澤保彦、ただのドタバタ喜劇で済むはずがありません。嵐の山荘に集まった不審な男女、主人公の友人の死、下界で起こるホステス殺し・・・これらの謎が収束し、論理的な解決に繋がる構成はさすがです。特筆すべきはラスト一行!ここを読んだ瞬間、私は久しぶりに「世界がひっくり返る」感覚を味わいました。

また、シチュエーションは奇抜ながら、現実的な人間の悪意をしっかり描くところも、いつもの西澤保彦流。テンポの良い文章に潜む狂気の数々に、時折ゾッとさせられました。陰と陽、二つの側面をちゃんと描写できるところが、この作家さんの凄いところですね。

難読名の登場人物が多いのが西澤作品の特徴ですが、それは今作でも同様。初読みの方は戸惑うかもしれませんが、ひと踏ん張りして読み続けて見てください。西澤保彦ワールドに引き込まれること間違いなしです。

 

主人公の設定が凄すぎる度★★★★★

他の登場人物も負けてませんよ度★★★★☆

 

こんな人におすすめ

・驚愕のどんでん返しを味わいたい人

・人間の狂気を扱った作品が好きな人

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コメント

  1. しんくん より:

    未読の作家さんです。新しい形のミステリーとは楽しみです。
    かなり惹かれるストーリーで他の作品も読みたくなりました。

    1. ライオンまる より:

      西澤保彦さん、大・大・大好きなんです!
      特殊な設定の話が多いので好き嫌いは分かれるでしょうが、私は見事にツボにハマりました。
      「主人公が冒頭で大量殺人を犯す」というぶっ飛び展開がどう収束するか、ぜひ読んで確かめてほしいです。

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