皆さんに兄弟姉妹はいるでしょうか?いるとして、その仲は良好ですか?私は一人っ子なので、昔から兄弟姉妹のいる家庭が羨ましかったものです。
親子とも友達とも違う兄弟姉妹。では、その相手に恐ろしい出生の秘密があったとしたらどうするでしょう?今日は、血の繋がりの因縁を描いたミステリ、2013年に早すぎる死を迎えた今邑彩さんの「いつもの朝に」を紹介します。
容姿端麗、文武両道の兄。落ちこぼれで問題児の弟。対照的ながらも母子家庭で平穏に暮らす二人だが、ある日、隠されていた手紙を見つけたことですべてが狂い始める。本当の父親は一体何者なのか。画家である母親が必ず絵に描き入れる「顔のない少年」の正体とは。運命に翻弄される兄弟の行き着く先は・・・・・
創作物において「対照的な兄弟姉妹」はいわばお約束のようなもの。今作にも優秀な兄と劣等生の弟という、真逆の兄弟が登場します。その正反対ぶりは、兄弟が通う中学で「キリスト」「ユダ」に喩えられるほどです。
とはいえ、そこで単純に終わらせないのが今邑彩。完璧と称される兄が陰で傲慢な部分を見せたり、みそっかすのはずの弟が物事の本質を見抜いていたりと、それぞれの意外な部分がきっちり描写されています。
また、主役の二人だけでなく、兄弟の母を始めとする大人たちもなかなか魅力的です。この手のティーンエイジャーが主役のミステリの場合、大人が脇に追いやられてしまうことが多々ありますが、今作ではしっかり活躍の場が与えられています。そのせいか、子どもの手に余る陰惨な事件が描かれても、重苦しい気分になりすぎることもありませんでした。
上下二段組、四百ページを超す大長編ですが、前半は出生の秘密にまつわるミステリ、後半は秘密を知った兄弟の葛藤を描く心理ドラマとメリハリが利いているので、飽きることなくラストまで読み進むことができました。もともと非常に読みやすい文章を書かれる作家さんなので、長編が苦手な方でもこれなら大丈夫なのではないでしょうか。
作者の今邑彩さんは五十七歳で病死されており、これが最後の長編作品になります。あとがきによると、闘病を続けながら執筆活動を続けており、その影響もあって今作のラストは変わったとのこと。今後もどんどん面白い話を書き続けてほしいと願っていた作家さんなので、早すぎる死が残念でなりません。
兄弟の仲って複雑度★★★★☆
大人も負けていません度★★★☆☆
こんな人におすすめ
・兄弟の愛憎劇に興味がある人
・出生の謎を扱ったミステリーが好きな人
この作家さん、最近興味を持って借りて来ました。
貴島シリーズから読む予定ですが、兄弟がいて子供がいる自分としても是非とも読んでおきたい作家さんです。
亡くなられたのは知っていました。まだ読んではいませんが残念です。
大・大・大好きな作家さんなので、訃報を聞いた時は本当にショックでした。
貴島シリーズのようなミステリーはもちろん、幽霊が登場するようなホラーも面白いですよ。
「いつもの朝に」はかなりボリュームのある大作ですが、読み応えは保証できます。