よく「子育ては戦場だ」と言われます。そう言われて想像するのはどんな場面でしょうか?子どもの夜泣き?トイレトレーニング?公園デビュー?もちろん、それだって大変なことだと思います。
でも、親業の大変さは、夜泣きやトイレトレーニングが一段落ついた後も続くものですよね。親の果てしなき奮闘ぶりを描いた作品と言えばこれ。ハートフルな作品を書かせたら天下一品、加納朋子さんの「七人の敵がいる」です。
まさに愉快痛快という言葉の似合う本作。ともすれば救いようもなく陰湿になりがちなテーマを、スカッと笑えるエンターテインメント小説に仕上げる筆力はさすがです。どろどろした家庭小説を書く作家さんはたくさんいますが、この明るさ・力強さを出せる方はなかなかいないような気がしますね。
とはいえ、作中で取り上げられるテーマは真面目なものばかり。押し付け合いばかりのPTA役員決め、女性の仕事を理解できない義実家、地域の仕事を「妻の役目」と決めつける夫、不穏な噂のある教師etcetc。これらの敵が必要以上にモンスター化しておらず、誰しも「ああ、あるある」と頷いてしまうような、リアリティたっぷりの存在として描かれています。
気弱な保護者ならあっという間にめげてしまいそうな問題ばかりですが、本作のヒロインは決して負けません。職場で「ブルドーザー」と評されるバイタリティと回転の速さを駆使し、愛する我が子のため懸命に闘います。降りかかるトラブルをなぎ倒し、ぐんぐん前進していくヒロインはまさにブルドーザーそのもの。そんな彼女が、家族の前ではちょっぴり弱気になったり涙もろくなったりする姿にはぐっときました。
出版当初から映像化向きの作品だなと思っていましたが、実際、二○一二年にドラマ化されました。ヒロイン役は元宝塚トップスターの真琴つばささん。原作小説とは設定が変わった部分がいくつかあるので、見比べてみるのも面白いかもしれません。
立ちふさがる敵は踏み潰します度★★★★☆
やっぱり子どもは癒し度★★★☆☆
こんな人におすすめ
・子育て小説を読みたい人
・ヒロインの痛快奮闘記が好きな人