はいくる

「我ら荒野の七重奏」 加納朋子

学生時代、何か部活動をやっていましたか?私の場合、部活参加が半ば義務だった中学校ではパソコン部でしたが、高校では三年間通して帰宅部部員。当時は特に何も思わなかったものの、今になって振り返ると、何かやっておけば良かったかもと思います。

そんな私は知りませんでしたが、十代の部活動って、親の役割がすごく大きいんですね。時には子どもとは無関係な部分で、親がシャカリキにならなければならない場面もあるんだとか・・・今日は、そんな部活にまつわる保護者の奮闘記をご紹介します。当ブログでも紹介した『七人の敵がいる』の続編、加納朋子さん『我ら荒野の七重奏』です。

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敏腕編集者であり、一人息子の陽介を深く愛する母親でもある「ミセス・ブルドーザー」こと山田陽子。陽介が中学受験の失敗を経て公立中学に入学し、吹奏楽部に入部したことから、陽子の新たな戦いの日々が幕を開ける。やたらお金がかかる音楽活動、夜を徹しての会場押さえ、中学生の引率に衣装作り、部活の運営に容赦なく口を出してくる保護者たち・・・我が子のために日夜戦う親たちの悲喜こもごもを描いた、子育てエンターテイメント小説第二弾。

 

前作『七人の敵がいる』では小学生だった息子・陽介は、めでたく中学校に入学。中学生ともなればそうそう親の出番はないだろうと踏んでいた陽子だが、実は・・・というのが、本作の大あらすじです。中学生の部活の場合、上下関係なども厳しいし、子どもはきっと大変だろうと思っていた私ですが、同じくらい親もキツいんだなとしみじみ実感してしまいました。

 

何がキツいって、部活動を行う上で親がやらなくてはならない仕事が多いこと多いこと。演奏会の場所取りのため徹夜で列に並び、楽器や必要物資運搬のため車を出し、まだ子ども子どもした中学生たちを引き連れて会場に向かい、いざ演奏会が始まると事務局業務のため我が子の晴れ姿もろくに見られない・・・しかもこれ、全部無償のボランティア活動なんですよね。「所詮は子どもの部活動」と甘く見たことを土下座して詫びたくなる多忙っぷりです。

 

ヒロイン・陽子は持ち前の行動力を活かし、愛する息子のために奮闘します。ここで「有能なヒロインがママ友界の悪をぶった切る」みたいな展開にしない点が、本作の面白いところ。むしろ、息子への愛情ゆえに、陽子がモンスター・ペアレントのような行動に出ることさえあります。

 

これだけなら単に困った父兄ですが、陽子に物申せるママ友・遥や陽子とは違った意味で有能な保護者・東京子(あずま きょうこ)、教職員でさえたじたじの父兄・女帝エガテリーナ(名字が「江賀」だから)などの存在により、陽子は自分の行動を反省したり、逆に奮起したりするのです。出しゃばりすぎた時に開き直るのではなく、素直に非を認める陽子の真っ直ぐさには好感が持てました。

 

内容は基本的に本作だけで独立しています。ですが、引き続き登場するキャラクターもいますし、『七人の敵がいる』を読んでからの方がより面白さが増すことは間違いないでしょう。ちなみに前作はドラマ化されていますが、ぜひ本作も映像化し、陽子のブルドーザーっぷりを堪能したいものですね。

 

中学生の保護者活動なんてラクチンラクチン度☆☆☆☆☆

仲間の存在って大切度★★★★☆

 

こんな人におすすめ

・部活動を扱った小説が読みたい人

・ユーモラスな家族小説が好きな人

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