人はなぜ結婚したいと思うのでしょうか。子どもが欲しいから?社会的な信用を得たいから?一人でいるのは孤独だから?理由は様々でしょうが、突き詰めればすべて「幸せになりたいから」に繋がると思います。
しかし、幸せと不幸せは表裏一体。幸福を得るために取った行動のせいで、思わぬ泥沼にはまってしまうことだってありえます。今回取り上げるのは、婚活の予想外の落とし穴を描いたミステリー、秋吉理香子さんの『婚活中毒』です。
理想の男と出会ったはずの女性が抱いた一つの疑惑、美女に振り回されるマニュアル男の選んだ道、データ重視の理系女子が編み出した婚活必勝法、息子の見合い相手の母親に惹かれていく男の行く末・・・・・結婚したい。幸せになりたい。ただそのために悪戦苦闘する男女の運命や如何に!?
婚活をテーマにした小説はたくさんありますが、ミステリーとなると意外に少ない気がします。でも、考えてみれば、これほどミステリーに合う題材もそうありませんよね。それぞれの思惑を胸に秘めた男と女。その人間模様をイヤミスの名手がどう描くのか、発売前から興味津々でした。
「理想の男」・・・仕事と恋人を失い、一縷の望みを託して入会した結婚相談所で理想の男と出会った主人公。容姿・性格・経歴すべて文句なしの男がなぜ相談所で婚活するのだろう。そんな疑念を抱く主人公は、ある恐ろしい可能性に気付き・・・・・
収録作品中、一番サスペンス色の濃い話でした。冒頭、主人公の追い詰められっぷりもなかなか深刻で、彼女が婚活にかける熱意に説得力を持たせています。今後の不穏さを感じさせるラストもグッド!
「婚活マニュアル」・・・婚活の一環としてバーベキュー大会に参加した主人公は、そこで魅力的な女性に出会う。早速、事前に勉強してきたマニュアルに従ってアプローチを開始。めでたく彼女とカップル成立した主人公だが・・・・・
このマニュアル、書籍化されたら絶対売れるだろうなぁ(笑)マニュアル男がマニュアルに縛られ四苦八苦する展開は予想通りですが、本作はそこからさらに一捻りしてあります。婚活というフィールドで幸福を掴むには、これくらいのバイタリティが必要なんでしょうか。
「リケジョの婚活」・・・婚活イベントで一目惚れした男性を射止めようと奮闘する主人公。根っからの理系人間である主人公は、自作の婚活ツールで彼をゲットしようとする。さて、そのツールの効果は如何に!?
私が一番好きだった話です。「データ最優先の理系人間が、データに振り回されて痛い目に遭う」というのがこの手の話のお約束ですが、予想の斜め上を行く展開に拍手してしまいました。この主人公、友達になりたいです。
「代理婚活」・・・妻に誘われ、親同士が子どもの結婚相手を探す代理婚活に渋々参加した主人公。そこで息子の見合い相手の母親に心奪われてしまった主人公は、彼女とまた会いたい一心で婚活を進めようとする。だが、息子にはまるでその気がないようで・・・
これまでの話は「結婚しようとする本人」が主人公でしたが、本作の主人公は「結婚する人間の親」。本来、第三者であるべき親に恋愛感情を持たせるという展開が面白いです。いくらでもドロドロできそうなところを、あえて心温まる大団円に持って行く流れが好印象でした。息子のキャラクターも実直かつ朴訥で素敵です。
どの話もスパイスの効いた内容ですが、一話一話のボリュームは少なめなのでさくさく読めると思います。重苦しいイヤミスは苦手という方には、特にお薦めしたいですね。硬軟併せ持つ秋吉さんの筆力を再確認できる佳作でした。
男と女の間には駆け引きがつきもの度★★★★☆
幸せになりたいのは皆同じ度★★★★★
こんな人におすすめ
・婚活をテーマにしたミステリーに興味がある人
・気軽に読める短編ミステリーが好きな人
秋吉理香子さんの新作ですか。秋吉理香子さんの真髄が活かされそうなテーマでかなり期待出来そうです。短編ミステリーのようですが、イヤミスたっぷりのストーリーが楽しめそうです。婚活する親の心理も興味深いです。
自分自身も結婚遅かったので、無理やりお見合いさせたり結婚しない弟を何とか結婚しようとさせる両親の気持ちを少しは理解出来るかな~と思います。
早速予約してこようと思います。
あまりイヤミスという感じではなく、男女の心の機微や駆け引きを楽しめる一冊でした。
分量もさほどでもないので、さくっと読めると思います。
私も婚活を経て結婚したので、登場人物たちの心情がなんとなく分かる気がしますね。