はいくる

「女子的生活」 坂木司

「女子」という言葉を聞いて、どんなものが思い浮かびますか。お洒落、合コン、甘いお菓子・・・そんな可愛くて楽しいイメージが強いのではないでしょうか。実際、ドラマや雑誌に出てくる女の子の日常には、明るく華やかなものが溢れています。

とはいえ、実際に女子の生活が楽しいことだけかというと、そんなわけありません。幸せのため戦い、前進しなければならないのは、男も女も一緒です。今日は、そんな女子の暮らしを描いた作品をご紹介しましょう。性別すら未公表の覆面作家、坂木司さん「女子的生活」です。

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アパレルメーカーに勤め、都会暮らしを満喫するトランスジェンダーのみき(本名:幹生)の毎日には刺激が一杯。なりゆきでルームシェアすることになった元クラスメイト、合コンで繰り広げられる熾烈な争い、相手の人格を認めないモラルハラスメント・・・うんざりすることもあるけれど、負けてなんていられない!自分らしく生きるため邁進する主人公の痛快ガールズストーリー。

 

女子力溢れるみきの生活が最高に愉快!可愛い物が大好きで、毎日のファッションやメイクにも余念がなく、合コンでは女友達と共同戦線を張ってマウンティングをかいくぐる。作者である坂木司さんは性別不明の覆面作家ですが、「女性なのでは?」と推測してしまうほど描写に臨場感がありました。

 

タイトル通り「女子的生活」を送るみきですが、決して順風満帆なばかりではありません。ブラック企業での勤務、トランスジェンダーであるがゆえの周囲からの偏見など、辛いこともたくさんあります。ここを決して陰気なものにせず、さらりと、しかし確実に心に残るよう描写する辺り、作者の筆力の高さを感じますね。

 

また、主人公をはじめとする登場人物たちも、実にいい味を出しています。みきは言うに及ばず、少しずつ成長を見せてくれるルームメイトの後藤、合コン仲間である同僚のかおり、みきと気楽な関係を結ぶショップ店員のゆい、みきに宝塚の男役に対するような憧れを抱くマナミなど、一作品の主人公が張れるくらい個性豊かなキャラクターの目白押しです。個人的には、「プロファイリング」と評されるほど鋭い人物評を繰り広げるかおりがツボでした。

 

これまで「運送業」「クリーニング店」「和菓子屋」など、様々なフィールドで奮闘する主人公を生み出してきた坂木司さんですが、今作は「女子」。そのため、中には共感しにくいと感じる読者もいるかもしれません。ですが、私はこの作品の中から、自分らしく生きることの大変さ、それでも負けまいとする人間のパワーを感じました。まだまだ膨らませられそうなエピソードが色々ありますし、ぜひともシリーズ化してほしいです。

 

女子の毎日って大変度★★★★☆

友情は宝だよね度★★★★★

 

こんな人におすすめ

・爽やかな成長物語が好きな人

・ファッションや合コン事情など、現代女性の生活を垣間見たい人

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