成功譚って面白いですよね。困難に負けず、逆境を跳ね除け、幸福への階段を上り詰めていくサクセスストーリーは、いつの世も人の心を惹きつけます。「サウンド・オブ・ミュージック」や「プリティ・ウーマン」が不朽の名作とされるのも、その辺りに理由があるのではないでしょうか。
では、失敗にまつわる物語はどうでしょう。登場人物はいかにして道を誤り、不幸になっていったのか。それだって、なかなか興味深いテーマだと思いませんか?というわけで、今日はこれです。イヤミス界の代表的作家として名高い真梨幸子さんの「私が失敗した理由は」です。
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「母親の愛」は、しばしば「無償の愛」「海より深い」といった表現をされます。見返りを求めず、自分の命すら顧みず、ただひたすらに我が子を想う。それは確かに愛情以外の何ものでもないでしょう。
でも、くれぐれもご用心。美しく崇高であるはずの母の愛が、時に暴走し、狂気へと変わっていくこともあるのです。今日ご紹介するのは、アニメや映画の制作活動でも活躍する、秋吉理香子さんの「聖母」です。
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登場人物の証言形式で構成された話、大好きです。有名なところでは、湊かなえさんの「告白」や宮部みゆきさんの「理由」、このブログでも紹介した貫井徳郎さんの「愚行録」などがありますね。語り手が変わるごとに二転三転する展開に、ついついのめり込んでしまいます。
小説の世界において、このように語り手によって読者をミスリードする手法のことを「信頼できない語り手」といいます。今日は、私がお気に入りの「信頼できない語り手」作品をご紹介しましょう。六十歳まで弁護士として活躍、リタイア後に作家デビューを果たした深木章子さんの「鬼畜の家」です。
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親業って大変ですよね。何しろ子育ては仕事と違い、定時もなければ定休日もなし。必要とあらば二十四時間年中無休で子どもと向き合う、それが親の役目です。そんなハードな毎日を乗り切るため、家族はもちろんのこと、同じような境遇のママ友と支え合い励まし合う人も多いでしょう。
ですが、そのママ友は本当に信頼できる相手でしょうか?自分だけではなく子どもも交えて付き合うママ友と、もしトラブルを起こしてしまったら?今日ご紹介するのは、ママ友付き合いの闇を描いたサスペンス、春口裕子さんの「悪母」です。
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インターネットって便利で面白いですよね。その場を動かず世界中の情報を知ることができるし、別世界に生きる人達と友達になることができる。私がこうして本について語ることができるのも、インターネットがあるからこそです。
でも、当たり前の話ですが、インターネットには恐ろしい部分もたくさんあります。情報の発信者も受信者も姿が見えないため、その気になれば何の責任も負うことなく人を傷つけ、貶めることができるのです。インターネットの匿名性の恐怖を描いた作品と言えばこれ、漫画や映画のノベライズ作家としても実績のある、降田天さんの「匿名交叉」です。
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「イヤミス」というジャンルが流行り始めて、もうずいぶん経ちます。文字通り、「読むと嫌な気分になるミステリー」の略で、最初にこの用語を使ったのは批評家の霜月蒼氏とのこと。代表的な作家としては、湊かなえ、真梨幸子、沼田まほかるなどが挙げられます。
かくいう私自身、イヤミスが大好きで、有名作品は一通り読んでいると思います。そこで今日は、個人的に「イヤミスの女王」と思っている作家、若竹七海さんの「クール・キャンデー」を紹介します。
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「欲しい物はありますか?」と聞かれて、皆さんは何と答えるでしょうか。お洒落な服?新しい車?素敵な恋人?私は美味しい特大スイーツと答えるかもしれません(笑)
欲しい物を求める気持ちは、人間なら誰でも持つもの。今日は、人間の尽きぬ欲望を描いた名作、永井するみさんの「欲しい」を紹介します。
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皆さんはどんな童話が好きですか?「白雪姫」「赤ずきん」「ヘンゼルとグレーテル」etcetc。私も子どもの頃、図書館から何冊も童話を借りてきては、夢中になって読みました。
でも、童話って、けっこう残酷な要素が多いですよね。最近は、童話の持つグロテスクな部分をクローズアップした作品も多く、ハマる大人も多いようです。今日は、童話の不気味さをテーマにした作品として、柴田よしきさんの初期の名作、「紫のアリス」を紹介します。
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「悪女」と聞くと、どんな女性を思い浮かべるでしょうか。武器を手に刃向う相手をバッタバッタとなぎ倒す女丈夫?それとも、色仕掛けで男性を手玉に取るセクシータイプ?
私のイメージする「悪女」は、決してスポットライトを浴びることなく、人から恨みを買うこともなく、水面下でひっそりと行動し利益を得るタイプです。そんな女性が登場する作品、「どんでん返しの帝王」の異名を取る、中山七里さんの「嗤う淑女」を紹介します。
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「嵐の山荘」と聞けば、胸ときめかせるミステリファンも多いと思います。かくいう私もその一人です。閉ざされた場所、繋がらない連絡手段、次々死んでいく関係者たち・・・考えただけでワクワクしますよね。
とはいえ、この手のネタは様々な創作物で使われているため、生半可なアイデアでは読者を驚かせることはできません。ありきたりな「嵐の山荘」小説に飽きた方は、これなんてどうでしょう。<SF新本格ミステリー>という分野を確立した、西澤保彦さんの「殺意の集う夜」です。
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