守護霊。文字通り、生者を守護してくれる霊のことです。大抵は、先祖や恋人、可愛がっていたペット等、縁のある存在が守護霊となるケースが多いようですね。困難にぶち当たった時、人知を超えた力で守ってくれる存在がいればいいな・・・そう夢想したことがある人は、決して少なくないと思います。
小説界で守護霊が活躍する作品といえば、有名どころだと『ハリー・ポッターシリーズ』があります。主要登場人物達が魔法使いということもあり、時に実体を得て敵相手に奮戦する守護霊達の姿は実に格好良かったです。あそこまで目立つ大活躍はしないものの、今回取り上げる作品の守護霊も大したものですよ。藤崎翔さんの『守護霊刑事』です。
こんな人におすすめ
コミカルな刑事ミステリー短編集に興味がある人
大磯拓真、二十四歳、若くして数々の事件を解決した名刑事―――――しかしその活躍のカラクリは、亡き祖母・八重子が守護霊として拓真をサポートしているからだった!死んだ女子大生が仕掛けた贈り物の謎、迷走する強盗事件の意外な真相、変死体から浮かび上がる歪んだ愛憎劇、誘拐事件の陰に隠されたもつれ合う人間模様、頭をなくした死体が語る陰謀の行方・・・・・拓真を待ち受ける事件の数々を、果たして八重子は解き明かすことができるのか。ていうか、私っていつ成仏できるの?孫&祖母(守護霊)が事件に臨む、ユーモアミステリー短編集
趣向を凝らしたトリックが売りの『逆転シリーズ』等と比べると、本作のトリックはどれも正統派。ものすごく分かりやすく伏線も張ってあるので、ミステリーに慣れた読者ならすぐ真相に気づくと思います。本作の面白さは謎解きではなく、守護霊である八重子(卓越した推理力の持ち主)が、拓真のおとぼけぶりにヤキモキしながら、<どうやって真相を拓真に気づかせるか>試行錯誤しつつ奮闘する点にあります。霊感の強いコンビニ店員・美久と知り合ったのをいいことに、彼女の手も借りつつ拓真に手柄を立てさせようとするのですが、このやり取りがすごく楽しいんですよ。拓真が凡ミスをするたびに首を絞めたりヘッドロックを決めたりしつつ、『拓真!このバカ!こっちに気づけ!』と大騒ぎする八重子の苦労を思うと、おかしいやら同情してしまうやら・・・うんざりしつつ協力してやる美久のキャラもいい味を出していました。
「守護霊刑事と愛憎のもつれ」・・・女子大生・亜沙香が一人暮らしのアパートで殺害された。亜沙香は既婚者の大学教授・宮出と不倫中であり、最近は関係がこじれていたらしい。宮出が、不倫が家族に露見することを恐れて殺害したのではないか。そんな疑いが高まる中、宮出の家宛てに、亜沙香が生前手配しておいたと思しき宅配便が届き・・・・・
名刑事だった祖父(実はこちらも八重子に助言をもらっていた)の威光もあり、行く先々で「刑事界のサラブレットだな」「あの伝説の名刑事の孫が来たぞ」と注目される拓真。そんな拓真が繰り返すうっかりミスの数々が、妙にリアリティあっておかしいです。これじゃ八重子も成仏できないでしょう。肝心の事件に関しては、収録作品中、この話のアイデアが一番面白いと思いました。こういう間違い、私もよくやるんだよなぁ。
「守護霊刑事と覆面強盗」・・・とある家で起きた強盗傷害事件。どうやら犯人は、被害者宅の合鍵を使って犯行に及んだらしい。被害者は一カ月前に入院しており、相部屋だった患者の誰かがこっそり合鍵を作った可能性が濃厚となる。早速、相部屋だった患者達に聞き込みを行う拓真ら捜査陣。その結果、患者の一人が行方をくらませていることが判明し・・・
八重子が、拓真の推理が見当違いだと評する際に思う「もしこれが小説だったら、この捜査のページをごっそりカットしたところで何の支障もない」という表現に笑っちゃいました。拓真、どんだけだよ。事件はというと、謎解きそのものよりも、謎解きに必要な豆知識の方が興味深かったです。へえ、あの部位の治療をした後って、そうなるんだ・・・
「守護霊刑事と変死体」・・・崖下から、頭部に傷を負った男性の変死体が発見された。どうやらこの男は生前、勤め先で横領事件を起こして逃亡中だったらしい。すぐに捜査が開始され、拓真は被害者が生前立ち寄った店をしらみ潰しに回っていく。と、ここで拓真は、被害者が立ち寄った店の頭文字に着目し・・・
序盤の描写から、被害者が割とろくでなしだということは察せられるのですが、真実は想像以上でした。警察も同情的なようだし、犯人がちゃんと更生してくれることを願います。それはそうと、八重子の推理を拓真に伝えるため、毎回のように妙なメモ書きを作ったり人形ごっこさせられたり棒読みで台詞を言わされたりする美久、気の毒でなりません(汗)
「守護霊刑事と誘拐」・・・二十歳の女子大生がさらわれる誘拐事件が発生。被害者・玲華は評判の悪い実業家の娘であり、金だけでなく父親絡みの怨恨が動機という可能性もある。捜査の結果、容疑者となったのは四人の男女。決定的な決め手のない中、なんと玲華が自力で逃げ出し、警察に保護された。玲華曰く、犯人は中年の夫婦だったそうで・・・
関係者の名前の頭文字に着目する拓真に対し、「ただの偶然だわそんなもん!ていうか、前回といい今回といい、頭文字好きだな!」と怒りまくる八重子に吹き出してしまいました。まあ、事件の手掛かりが頭文字どうこうなんて、実際にそうあるわけないですからね。真相のひっくり返り方は、すごく好みです。こういう顛末を迎える犯罪って、実は結構多いのではないでしょうか。
「守護霊刑事と怪事件」・・・拓真は美久と共に出向いたヒーローショーの最中、出演者の頭部が爆発するという大惨事に遭遇する。捜査の結果、被害者はショーを行っていた劇団の団員・宮内だと判明。また、劇団員の渡辺が事件後に失踪しており、容疑者と目される。劇団仲間達曰く、宮内と渡辺はアクションの指導を巡り確執があったようで・・・・・
なんとなんとなんと!!ここまでポンコツだった拓真が、八重子のサポートなしに事件の真相に近づいていきます。その背後で感激しまくる八重子が可愛いったら。とはいえ、最後にビシッと決まらず、間抜けな姿を晒すところはなんとも拓真らしい・・・八重子の心配はまだ尽きないようですね。
ところで本作、帯に<ドラマ化決定>とでかでかと書かれ、下に小さく<してほしい!>と書いてあります。一瞬、「おおっ」と思ったので、ちょっと残念でした。藤崎翔さんの『おしい刑事シリーズ』は風間俊介さん主演でドラマ化されているけど、本作も十分映像化向きだと思うんですよね。表紙を見る限り、拓真はまあまあイケメンながらコメディリリーフとしての役割もこなすので、松田元太さんなんてどうでしょう?
ツッコミながら読むのが最高に楽しい!度★★★★★
幽霊の設定がなかなかユニーク度★★★★☆
霊が事件に関与する設定は中山七里さんを思い出します。
「静おばちゃんにおまかせ」また「人面瘤探偵」もある隠された能力か別人格というより霊ではないかとふと思いました。
藤崎翔さんは「逆転ミワ子」と「ものまね芸人したいを埋める」を借りてきました。
「お梅は次には呪いたい」も予約中です。
「逆転ミワ子」は注意して読まないと意味が分からないまま終わりそうなので意味を理解しながら読んでます。
拓真のキャラクターが面白そうです。
祖母の助け無しに成長していけそうでもまだまだ成仏出来ないと思う展開はお決まりだと感じます。
神木隆之介さんがイメージにピッタリです。
櫛木理宇さんの「ふたり腐れ」予約しています。
「静おばあちゃんにおまかせ」は幽霊っぽいですね。
「静おばあちゃん~」は最後にしんみりさせられましたが、本作は終始コミカルで、祖母の存在をまるで意識していない拓真のキャラクターが面白かったです。
こちらは「お梅は次こそ呪いたい」を読了しました。
「二人一組になってください」の予約順位が回ってきたので、近日中に読めそうです。