はいくる

「中島ハルコはまだ懲りてない!」 林真理子

悩みを抱えた時の一番スタンダードな解決方法は、「誰かに相談する」だと思います。ネットで調べる・占いに頼る・趣味に没頭して気を紛らわせる、などの方法もありますが、これだと正確性に欠けたり、根本的な問題解決にならなかったりしますよね。信頼できる誰かと向き合い、悩みを打ち明ければ、たとえ解決策が見つからなくても気持ちが軽くなるものです。

となると次なる問題は「相談相手として誰を選ぶか」ということです。両親や配偶者など、確実に頼れる身内がいる人はいいでしょう。ですが、そういった身内を持たない人もいますし、場合によってはその身内が悩みの種だったりするケースもあります。恋人や友達にしたって、性格や能力その他諸々によっては、「好きだけど、的確な助言をくれる相手ではない」ということだってあり得ます。でも、この人が知人ならば、悩み相談する相手を迷わずに済むんじゃないでしょうか。林真理子さん『中島ハルコはまだ懲りてない!』に登場する中島ハルコです。

 

こんな人におすすめ

コミカルで痛快な人間模様が読みたい人

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それでも正義は我にあり。ひたすら我が道を邁進する女社長・中島ハルコは、今日も人々の悩みを一刀両断する。医学部をやめた息子に嘆く母、夫の浮気に悩む梨園の妻、韓流ブームの沈静化に困惑する韓国人コーディネーター、年下男に求婚された美魔女、親の遺産相続を巡って対立する子ども達・・・・・遠慮?躊躇?社交辞令?知ったことか、そんなもん!さらにパワーアップした中島ハルコの快進撃を描く人気シリーズ第二弾

 

このシリーズは、絶対にじめじめした結末にはならないので、安心して読めます。第一弾に引き続き、本作も「不倫」「離婚」「相続」等々、けっこう深刻な問題を扱っているんですが、とにもかくにも中島ハルコの言動がズバズバと痛快なので陰気な気分になりません。さらに、中島ハルコとは腐れ縁のフードライター・いづみに新たな恋の相手が現れます。全十話中、特に記憶に残ったエピソードをご紹介しますね。

 

「ハルコ、離婚に反対する」・・・ハルコに誘われお茶会に参加したいづみ。会終了後、ハルコは主催者である母娘から相談を受ける。娘の礼子は夫と別居中で、離婚を求められているらしい。理由は、愛人の子の私立校受験問題が絡んでいるようで・・・

スッキリ度数で言えば収録作品中トップクラスでした。夫の愛人の子の境遇に同情し、離婚を承諾しようとする妻に、ハルコは「そんなにいい人になるな。ルールを犯したら当然ペナルティがある。これは子どもの問題にも適用される。学校は公立に行けば済む話」とポンポン言うんですよ。何かあると、錦の御旗のように「子どもは無関係」と繰り返す人もいますけど、だったらまず子どもを巻き込むような問題を起こすなって話ですよね。

 

「ハルコ、梨園の妻を諭す」・・・歌舞伎座を訪れたハルコといづみ。と、ハルコが後援会幹事を務める役者の妻・純子がやって来る。純子は夫の浮気に耐えかね、子連れで実家に帰省中。離婚を考えているものの、思わぬ横槍が入ってきて・・・

梨園という特殊な業界らしいエピソードです。夫婦の浮気や離婚問題に後援会会長が出てくることにまずびっくり。でも、事の本質は梨園云々ではなく、「浮気は辛いけど、夫のことがまだ好き。本当は別れたくない」という妻の女心の問題でした。そのことを、モリモリ飲み食いしながら話を聞いて瞬時に見抜くハルコは、やはり鋭い洞察力の持ち主です。役者の妻のことを「舞台に立たない役者」と表現するところ、何だか好きだなぁ。

 

「ハルコ、韓国人に檄を飛ばす」・・・いづみはハルコと共にソウルへ取材旅行に出向く。現地で合流したヒョンヒは美貌と才気に恵まれたコーディネーターだが、最近は仕事にあぶれ気味。どうやら日本と韓国の関係悪化が影響しているらしく・・・

骨董屋で茶碗を巡って店主と四時間も交渉し続けるハルコが凄すぎる(笑)国同士の関係を巡る問題ということもあり、いつもよりシリアスムード・・・かと思いきや、やっぱりいつもの中島ハルコ。「美貌を有効利用しろ」というアドバイスは、フェミニストからは嫌われそうだけど、間違いなく効果があることでしょう。文中に朴槿恵元大統領の名前がさらりと出てくるところに時代を感じました。

 

「ハルコ、美魔女に出会う」・・・ハルコといづみは人気カフェでお茶の最中、なりゆきでオーナーの今日子と同席することになる。今日子は年齢不相応な美貌を誇り、今なお男たちのマドンナ的存在。しかも十八歳年下の男に求婚までされたそうだが・・・・・

いやー、これは滅茶苦茶深いなぁ。今日子の年の差婚に反対し、「二十歳で男に裏切られるのと、五十で裏切られるのとじゃ、まるっきり痛みが違う。自分への否定になり、絶望になる」と言うハルコの言葉には納得です。悲しいかな、女性はやっぱり年齢に左右される性なんですよね。相談者が怒って立ち去り、ハルコが「今回は私の出番じゃなかった」と言う珍しい展開も面白かったです。

 

「ハルコ、相続について語る」・・・いづみはハルコにある提案をする。懇意にしている料理研究家・妙の家を買ってくれないか、というものだ。妙の母の遺産だが、維持費がかかることもあり、兄姉は早く売りたがっている。だが、妙は家を残したがっていて・・・

遺産相続を機に争う子ども達という、現実にも山ほどある哀しい話です。「なくなっていくものはなくなっていく」という、ある意味で寂しい結論が出ますが、決して後ろ向きな雰囲気でないのは、中島ハルコの存在のせいでしょう。あと、有料悩み相談サイトを作ろうかと考えるハルコに、いづみが言った「お金を取ったら、人の相談に乗ってあげるというハルコさん唯一の長所がなくなる。たちまち嫌われ者になる」という言葉がツボでした。

 

「ハルコ、いづみの背中を押す」・・・ハルコはいづみの結婚問題について相談を受ける。いづみの恋人・熊咲は大企業の経営者一族の息子だが、愛人の子という境遇にコンプレックスがある。なかなか話が進まない二人を、ハルコは馴染みの河豚料理屋に連れて行き・・・

最終話にしてハルコさん、めっちゃ粋!!これまで(真実を突きつつも)傍若無人な面が目立っていたハルコが、ちゃんと優しさと気配りの心を持っていたことが分かります。なんだかんだ言いつつ、いづみのことも大事な友達と思っているんでしょう。最後の台詞もニクイですねぇ。熊咲はそういうハルコの良さを理解できる男性だと思うので、ぜひとも結婚後も夫婦でハルコと関わり続けていってほしいです。

 

最近知った話ですが、この『中島ハルコシリーズ』は、今年の六月から漫画雑誌ココハナで『ハイパーミディ 中島ハルコ』という題名で連載中だそうです。コミカライズを担当するのは、『海月姫』『東京タラレバ娘』などで有名な東村アキコさん。好きな漫画家さんなので、こちらも期待が高まります。

 

言ってることは意外と正しい度★★★★☆

戸締りは確実にしなさいよ度★★★★★

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コメント

  1. しんくん より:

    誰かに相談しようにも相手を選ぶ、探すのも悩むところですがこの人なら多少キツイことを言われても相談しようと思います。
    相談の内容もハルコのキャラクターも大変興味深いですね。
    林真理子さんのキャラクターならスッキリと解決してくれそうです。
    1作目から読んでみたいと思いました。

    1. ライオンまる より:

      不倫したりお金にがめつかったりと、決して褒められた人間ではない中島ハルコのキャラが面白いです。
      言っていること自体は、無茶で強引ながら真実なんですよね。
      このシリーズ、まだまだ続いてほしいです。

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