唯川恵

はいくる

「天に堕ちる」 唯川恵

好意を抱く、心惹かれる、ときめく、思いを寄せる・・・誰かに恋愛感情を抱く表現は色々ありますが、一番一般的なのは<恋に落ちる>という言い方だと思います。この表現の由来は不明ですが、理性ではどうにもならない心理状態にすっぽりはまる様子が<落ちる>と言い表されるのかもしれません。実際、恋が原因でのっぴきならない状態に陥ってしまった人は現実にも大勢存在します。

当然、容易く抜け出せない恋愛をテーマにした小説も数えきれないほどあります。辻仁成さんの『サヨナライツカ』、東野圭吾さんの『夜明けの街で』、山本文緒さんの『恋愛中毒』など、三十代以上の男女を主人公にした、どちらかというと大人向けの作品が多いですね。今回ご紹介する小説にも、どうにもならない恋の沼にはまりこんでしまった男女が出てきます。唯川恵さん『天に堕ちる』です。

 

こんな人におすすめ

泥沼のような恋愛模様を描いた短編集が読みたい人

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「逢魔」 唯川恵

本は好きだから国語も好き。でも古典は苦手・・・という人って多いのではないでしょうか。かくいう私もそうでした。何と言っても文体が違いますし、<音きこゆ>だの<さう思へ>だのといった文章を訳するだけで一苦労。学生時代の古典の先生が結構怖かったこともあり、作品を楽しむより授業を無事終えられるかどうかばかり気にしていました。

それが変わったのは、大和和紀さんの『あさきゆめみし』を読んだことがきっかけです。概ね原作の『源氏物語』に忠実ながら、現代でも分かりやすいオリジナルの描写やエピソードが挟まれていたことで、物語の世界観をすんなり受け入れることができました。この頃から段々と「古典も面白いじゃん!」と思い始めましたし、古典を下敷きにした創作物への興味も生まれました。今回ご紹介するのも、古典をモチーフにした小説です。唯川恵さん『逢魔』です。

 

こんな人におすすめ

・男女の愛憎をテーマにしたホラーが好きな人

・古典をアレンジした小説に興味がある人

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「テティスの逆鱗」 唯川恵

美しくなりたい。そう思ったことが一度もない女性は、恐らくいないでしょう。男性にもそういう願望はあるでしょうが、やはり美に対する欲求は女性の方が大きい気がします。かつて、自分の容姿に満足できない人間は、服装や化粧で美しさを磨くしかありませんでした。しかし、現代ではそれ以外の方法があります。美容整形です。

患者への負担が少ない<プチ整形>の発展もあり、美容整形は美を手に入れるための一般的な方法になりつつあります。ですが、人間の欲とは限りないもの。美への欲求に憑りつかれ、理性を失う患者がいたとしたら。そして、その限りない欲求を叶える手段として美容整形を選んだら。果たしてどんな悲劇が待ち受けているのでしょうか。唯川恵さん『テティスの逆鱗』では、美しさへの執念に憑りつかれた女性たちの狂気が描かれています。

 

こんな人におすすめ

美容整形にまつわるサイコホラーが読みたい人

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「永遠の途中」 唯川恵

あの時、違う選択肢を選んでいたら・・・・・あの人のような生き方をしていれば・・・・・誰でも、そんな空想をした経験があると思います。私自身、けっこう気にしがちな性格ですので、自分の選択を振り返ってはくよくよしてしまうことも多いです。

「隣の芝生は青い」の言葉通り、自分がいない場所ほど美しく、自分が持たない物ほど素晴らしく思えてしまうものなのでしょう。今日は、そんな人の心の複雑さを描いた作品をご紹介します。恋愛小説の名手として名高い唯川恵さん「永遠の途中」です。

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