皆さんは動物が好きですが?たくさんいる動物の中で、特にひいきの動物はいるでしょうか。私はずっとマンション暮らしだったため動物を飼った経験がなく、今は近所の猫カフェに通って癒されています。
フィクションの世界にも、人間以上に生き生きと活躍する動物がたくさんいます。児童文学なら「名犬ラッシー」、ノンフィクションなら「野生のエルザ」、最近の作品だと赤川次郎さんの「三毛猫ホームズ」シリーズなどが有名ですね。今日は、一匹の猫が中心となる小説をご紹介しましょう。深木章子さんの「猫には推理がよく似合う」です。
弁護士事務所で事務員として働くヒロイン・花織。毎日の楽しみは、事務所で飼っている猫のスコティと他愛ないお喋りにふけること。スコティは人間の言葉を話すことができるのだが、それは花織だけが知る秘密だ。妻の浮気の証拠として預かった5カラットのダイヤ、資産家の遺産を巡る骨肉の争い、横領事件を起こして失踪した社員の詫び状・・・持ち込まれる様々な案件をネタに会話を弾ませる花織たちだが、ある日、本当の事件が起きてしまい・・・・・猫への愛に溢れた、本格推理小説の始まり始まり!
「スコティッシュフォールドが喋る」というSF風味の設定で始まる本作。中盤までは、ヒロインの花織と猫のスコティのお喋りが物語の中心であり、とてもほのぼのした雰囲気です。またこのスコティの物言いや仕草がいちいち可愛らしい!!猫好きな読者なら、きゅんきゅんしてしまうこと請け合いです。
とはいえ、そこはやっぱり深木章子。ただのほんわか小説で終わるはずがありません。不倫問題、遺産相続、横領事件など、出てくる事件はどれも生臭いものばかり。関係者たちも現実感たっぷりの胡散くさい人物ばかりで、いい感じに不穏な空気をかき立ててくれます。
そして後半。ここで、深木章子ワールドの常連である弁護士・睦木怜が登場し、一気に本格推理の様相を呈してきます。その後明かされる、悲しみと驚きに満ちた真実・・・・・改めて読み返してみると、作中のあちこちに伏線がちりばめてあり、作者の筆力に見事に騙された気分です。
これまでの深木作品を知る読者にとっては、「おしゃべり猫」という設定に驚くかもしれませんが、心配はご無用。筋の通った事件の真相といい、「探偵役は終盤に動き出す」というお馴染みの展開といい、深木章子さんらしい色もしっかり出ています。猫好きにも、そうでない方にも、読み応えのある一冊と言えるのではないでしょうか。
やっぱり猫は可愛い度★★★★☆
SFと見せかけて本格推理小説度★★★☆☆
こんな人におすすめ
・猫好きな人
・人間の哀しさや切なさを扱った小説が好きな人