おもちゃが大嫌いという人ってあまりいない気がします。「テレビゲームは苦手」「パズルは好きじゃない」などという好みはあるにせよ、誰しもお気に入りだったおもちゃの一つや二つあるでしょう。かくいう私も子どもの頃はおもちゃ屋さんに行くのが大好き。今でさえ、時間がある時は、ショッピングセンターのおもちゃ売り場をぶらぶら歩くくらいです。
子どもを、時には大人をもワクワクさせるおもちゃの数々。一体どんな人が、そんなおもちゃを考え出しているのでしょうか。今回は、魅力的なおもちゃの作り手が登場する作品を取り上げたいと思います。柚木麻子さんの『ねじまき片想い~おもちゃプランナー・宝子の冒険~』です。
こんな人におすすめ
元気をもらえるお仕事・恋愛小説が読みたい人
富田宝子はおもちゃ会社で働く凄腕おもちゃプランナー。愛らしい容姿と天才的なおもちゃ作りのセンスを持つ彼女だが、外注デザイナー・西島への恋心だけはどうにもうまく表せない。西島に降りかかるトラブルを陰ながら解決することで満足する毎日だ。部屋の窓から見えなくなったスカイツリー、西島の恋人が関わる脅迫騒動、消えてしまったアニメのデータ、暗躍する老人たちのスリ集団・・・・・次から次に巻き起こる事件を乗り越えて、宝子の恋が成就する日は来るのだろうか!?
あああああっ、まどろっこしい!!!と思わず叫びたくなってしまう女性、それが本作のヒロイン・富田宝子です。才能にも容姿にも恵まれていながら、唯一恋路だけはうまくいかず、片思いの相手・西島に尽くす「だけ」で満足する宝子がいじらしくもあり痛々しくもあり・・・西島が「悪い人じゃないけど、そこまで熱心に恋するほどの相手か?」と思わせるキャラクターだというところ、妙にリアリティありますね。
「スカイツリーを君と」・・・ある日、宝子は西島が「隣りのマンションに貯水タンクができたせいで、窓からスカイツリーが見えなくなった」とこぼすのを耳にする。景色を楽しめないなんて可哀想!宝子は早速行動を開始するのだが・・・
いくら恋する相手のためとはいえ、自分とは全然関係ないマンションの貯水タンクを何とかどかそうと画策する宝子の発想・行動力が凄すぎです。そんなことするより西島に告白する方がずっと簡単だと思うんですが・・・結果的に宝子が探り当てた真実は収録作品中トップクラスで哀しいものでしたが、一抹の救いがあって良かったです。
「三社祭でまち合わせ」・・・西島に恋人がいることを知り、落ち込む宝子。だが、ふとしたきっかけで、恋人の女性が実は既婚者であることを知ってしまう。おまけに怪しげな探偵まで現れて・・・・・
「彼のために頑張って手作り弁当を用意した!」→「別の女性が持ってきた人気店のカレーパンの方がずっとウケた」という流れ、なんだか現実にもありそうで切ないです。事件自体は身勝手女の自業自得・・・と言ってしまえばそれまでですが、こういう心理って誰にでも多かれ少なかれあるのかもなぁ。個人的には、西島よりちらほら出てくる刑事・目黒の方がずっと好みです。
「花やしきでもう一度」・・・新商品のイベントで放映するアニメ作成を任された西島。ところがイベント当日、USBに入れたはずのアニメのデータが消えてしまう。確かに保存したはずなのに、なぜ?西島のため事態解決に乗り出す宝子が見つけた真相とは。
これまで直接顔を合わせることのなかった(でも結果的に同じ事件に関わっていた)宝子と刑事・目黒がようやく出会います。いや本当、西島より目黒の方がずっといいと思うよ、宝子さん。とはいえ、西島には西島で秘めた過去があることが分かるし、事件自体も大団円で気分すっきりのエピソードでした。
「花火大会で恋泥棒」・・・西島がスリに財布を盗まれた!奪われたのは入れてあった現金とプレミアもののテレホンカード。ということで、またしても宝子は西島のため奔走する。その結果、なんとスリ集団の仲間入りする羽目になってしまい・・・
宝子、努力する向きを間違ってるなぁ。宝子がスリの真似事をするという展開もインパクトありますが、この話で一番印象的なのは宝子のルームメイト・玲奈。レズビアンである彼女の言葉、そして行動が胸に響きました。え、西島?この鈍感男には誰かバケツで水でもかけてやってくれ(怒)
「あなたもカーニバル」・・・なりゆきでルームシェア生活を始めて二年、男女として何の進展もない宝子と西島。ある日、宝子は消えてしまった玲奈の行方に関する手掛かりを発見する。無事に再会した二人が向かった先、そこは潰れた遊園地だった。
ここへ来て、甘えっぱなしの西島をついについについに冷たくあしらう宝子に拍手!二年間、宝子に金銭面・生活面の雑事をすべて任せきりだなんて、いくらなんでも未熟すぎるだろう、西島。廃墟になった遊園地と玲奈のエピソードは素敵ですし、最後のメリーゴーランドの場面なんて映像にしたらすごく映えそう。ラストに相応しい、希望ある話でした。
正直、ヒロイン・宝子をどう思うかで評価の分かれそうな作品ですが、私はなんだかんだ言いつつ応援したくなる女性だと思います。映像化するとしたら、清楚ながらトンデモ行動派美人ということで、深田恭子さんなんてどうでしょう。あと、本筋とは関係ありませんが、「富田宝子」という名前が某有名おもちゃメーカーから来ているということに、読了後に気付いた私です。
片思いのパワーに果てはなし!!度★★★★☆
ねじは回さないと意味がない度★★★★★
図書館でよく見かける作品でしすが、「私にふさわしいホテル」と同じく読もうと思いながら読まないままでした。
登場する西島は伊藤君AtoEの伊藤君で宝子も伊藤君に良いように利用される女性に似ているような気がします。
玩具メーカーとコラボしている作品!?とさえ思ってしまいそうです。
宝子は新垣結衣さんか長澤まさみさんがピッタリ当てはまりそうな気がします。
西島は「多少マシな伊藤君」という感じですね。
ダメンズな部分は多々あれ、宝子を女性として弄んだりはしないので・・・
新垣結衣さんもいいですね!愛らしいルックスがイメージピッタリです。
読み終えました。面白かったです。
健気な宝子に腹が立つほど無関心な西島に歯車が噛み合わないとはこういうことだと感じました。
玩具の歴史や浅草の様子にミステリーと楽しい要素満載でした。
浅草の描写を感じるのは漫画でも小説でも「こち亀の両さん」だけだったのでより親しみを感じました。
ありきたりのラブストーリーの結末でなくピシャリと西島を突き放す宝子の姿が格好良かったです。
今ならば富田宝子は吉岡里帆さん、玲奈は今田美桜さん、西島が矢本悠馬、室長な妻夫木聡、榎木田は成田凌とドリームジャンボのメンバーがそのまま当てはまりそうです。
普通の恋愛小説なら、西島が宝子の愛情に気付いて結ばれるor宝子がもっとふさわしいパートナーを見つけるというパターンになりそうですが、そう簡単にはいかないのが柚木麻子さん。
自分らしく新たな一歩を踏み出した宝子の姿が清々しかったです。
恋愛だけでなく、ミステリー小説としての構成もしっかりしているところが嬉しいですね。