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「ヨモツイクサ」 知念実希人

かなりのホラー好きを自認する私が最初にハマったホラー作品は、ゲーム『バイオハザード』でした。幽霊でも妖怪でもなく、ウィルスのせいで巻き起こる阿鼻叫喚の数々がものすごく新鮮で、すっかり夢中になったものです。賛否両論あるようですが、映画版も結構好きなんですよ。

思えば『バイオハザード』以降、<バイオホラー>というジャンルが世間に広く知れ渡った気がします。これは生物技術が絡んだホラー作品のことで、ウィルス、細胞、未知の生命体といった要素がテーマとなることが多いです。心霊はあまり登場せず、科学や物理が通用する敵がメインな分、派手なアクションが繰り広げられることもしばしばですね。先日読んだ作品もそうでした。知念実希人さん『ヨモツイクサ』です。

 

こんな人におすすめ

・バイオホラー作品が好きな人

・アイヌ文化に興味がある人

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「嘘つきジェンガ」 辻村深月

<詐欺>とは、人を騙し、金品を奪ったり損害を与えたりする犯罪のことです。強盗やひったくりなどとの違いは、被害者と加害者がある種のコミュニケーションを取っていることが多いという点でしょう。結婚詐欺などをはじめ、被害者が加害者に愛情や信頼を抱くケースもあり、立件が難しいこともしばしばのようです。

詐欺をテーマにした小説といえば、以前、当ブログで乃南アサさんの『結婚詐欺師』を取り上げました。あとは、ちょっとコミカルなものなら道尾秀介さんの『カラスの親指』、ホラーなら貴志祐介さんの『黒い家』、どんでん返しミステリーなら歌野晶午さんの『葉桜の季節に君を想うということ』etcetc。どれも面白い作品ばかりです。それからこれも、詐欺という犯罪の性質を活かした佳作でした。辻村深月さん『嘘つきジェンガ』です。

 

こんな人におすすめ

詐欺をテーマにした心理小説が読みたい人

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「闇祓」 辻村深月

道徳に反したやり方で相手を精神的に追い詰めるモラルハラスメント、性的な言動で相手に苦痛を与えるセクシャルハラスメント、職場内で権利や立場を利用した嫌がらせを行うパワーハラスメント、妊娠・出産・育児に関することで心身に不快な思いをさせられるマタニティハラスメント、教育現場において教職員がその権限を使って他者の修学や教育の邪魔をするアカデミックハラスメント・・・・・悲しいかな、この世にはたくさんのハラスメント、すなわち人権侵害が溢れています。もちろん、こうした嫌がらせ行為は大昔から存在したのでしょうが、今はインターネット文化が発展した分、より複雑かつ陰湿になってきた気がします。

一言でハラスメントと言ってもその種類は様々であり、当然、作中にハラスメント行為が出てくる小説もたくさんあります。というか、ハラスメント(嫌がらせ)が一切登場しない小説の方が逆に少ないかも?最近読んだ小説では、奥田英朗さんの『最悪』や垣谷美雨さんの『もう別れてもいいですか』で、読者をうんざりさせるようなハラスメントが描かれていました。それから、ちょっと毛色が違いますが、この作品のハラスメントにも背筋がゾワゾワしっぱなしでしたよ。辻村深月さん『闇祓』です。

 

こんな人におすすめ

ハラスメントがテーマのホラーミステリー小説が読みたい人

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「琥珀の夏」 辻村深月

少し前から<親ガチャ>という言葉を聞くようになりました。これはカプセルトイやソーシャルゲームのアイテム課金方式の<ガチャ>になぞられた言い方で、<どんな親の元に生まれるか、事前に自分で選ぶことはできない>という意味だとか。「甘えだ」「責任転嫁に過ぎない」という非難もある一方、DV等に苦しんで育った人達からは賛同を得ているようです。

私個人で言えば、どちらかといえば賛成する気持ちの方が大きいです。心身共に健康に成長した大人が「もっと金持ちの家に生まれたかった。親ガチャ外れた」と言うのは甘えだと思いますが、それが幼い子どもなら?その子の親が、子どもの人権など認めず、命すら危ぶまれるような目に我が子を遭わせる人間だったら?自立して生きていくことが不可能な幼児にとって、どんな親の元に生まれるか、どんな大人に囲まれて育つかは、人生最初にして最大の大博打と言っても過言ではありません。この作品を読んで、つくづくそう思いました。辻村深月さん『琥珀の夏』です。

 

こんな人におすすめ

子ども時代の苦い記憶を扱ったヒューマンミステリーが読みたい人

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「カレーライフ」 竹内真

「あなたが一番好きな料理は何ですか?」という質問があり、結果をランキングにするとしたら、どんな答えが集まるでしょうか。さぞかし多くの回答が出るでしょうが、恐らくトップ5の中にはカレーが入っていると思います。ビーフ、ポーク、チキンにシーフード等、種類が豊富な上、辛さを調節したりスパイスで味を変えたりもしやすいので、老若男女問わず人気がある一品です。

しかし、どれだけ人気があろうと、料理一品をテーマに長編小説を書くのは至難の業。それはカレーとて例外ではなく、カレーをテーマにした小説と言えば、橋本紡さんの「ココナッツミルクのカレー(『今日のごちそう』収録)や山口恵以子さんの「うちのカレー」(『うちのカレー』収録)というように短編小説が多いです。それももちろん面白いけれど、たまには頭のてっぺんから爪先までたっぷりどっぷりカレーに浸りたいという方には、これなんてお勧めですよ。竹内真さん『カレーライフ』です。

 

こんな人におすすめ

カレーをテーマにした青春成長小説が読みたい人

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「月蝕島の魔物」 田中芳樹

小説の中にはしばしば実在した歴史上の人物が登場します。その人物が主役の話ももちろん面白いですが、個人的には、創作キャラクター主役の話に脇役として実在の人物が登場する方が好きですね。歴史に名を残す人物が、周囲の目にどんな風に映っていたか。そんな描写を読むのが好きなんです。

この手の作品で私の一押しは、浅田次郎さんの『蒼穹の昴』。西太后や袁世凱、孫文といった歴史上の人物がわんさか登場しますし、主要登場人物の一人と少年時代の毛沢東が絡むシーンは感動でした。こちらは日中合作でドラマ化されたほどの有名作品なので、今回は別の作品を取り上げたいと思います。田中芳樹さん『月蝕島の魔物』です。

 

こんな人におすすめ

ヨーロッパが舞台の冒険譚が読みたい人

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「噛みあわない会話と、ある過去について」 辻村深月

私は創作物に年齢制限を設けることが嫌いです。ですが、大人向けの作品というものはあると思います。これは内容が卑猥だとか残酷だとかいう意味ではなく、「ある程度以上の年月を生きてきた大人だからこそより面白さが理解できる作品」という意味です。

映画『スタンド・バイ・ミー』などその代表格だと思いますし、恩田陸さんの『夜のピクニック』や朱川湊人さんの『花まんま』には、懐かしくノスタルジックな雰囲気が漂っていました。そう言えば私は、小学生の時に観てイマイチだと思った『おもひでぽろぽろ』の面白さが大人になってから分かり、「ああ、年を取るってこういうことか」と実感したものです。ここまで挙げた作品は郷愁を誘う切ないものばかりですので、少し趣の違う「大人向けの作品」を紹介したいと思います。辻村深月さん『噛みあわない会話と、ある過去について』です。

 

こんな人におすすめ

いじめやいじりに関する短編集が読みたい人

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「鍵のない夢を見る」 辻村深月

「犯罪」とは読んで字の如く「罪を犯すこと」です。テレビや新聞に目を向ければ、毎日のように新たな犯罪が起こっていることが分かります。それを見て大抵の人は不快感や恐れを感じ、同時にこう思うのではないでしょうか。「私には、犯罪なんて無関係だ」と。

ですが、犯罪とは決して遠い世界の出来事ではありません。ほんのちょっとしたきっかけで、自らが犯罪の加害者や被害者になることもありうるし、目撃者などの形で関わることもあるでしょう。今回紹介する本には、それぞれの形の犯罪と関わることになった五人の女性が登場します。辻村深月さんの直木三十五章受賞作『鍵のない夢を見る』です。

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「かがみの孤城」 辻村深月

何でも願い事を一つ叶えてあげる・・・物語によくあるシチュエーションです。もしそんな局面に直面した時、人は何を願うのでしょうか。私は想像力貧困ですので、いざそういう状況になったら、「家内安全、無病息災」くらいしか思いつかないかもしれません(笑)

しかし、世の中には、切実に叶えたい願いを持つ人もいます。どうにもならない現実に苦しみ、人ならざるものの力を借りてでもそれを打開したいと願う子どももいます。今日取り上げる小説には、そんな子どもたちが登場します。辻村深月さん『かがみの孤城』です。

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「盲目的な恋と友情」 辻村深月

「盲目的」という言葉を辞書で引くと、「愛情や情熱・衝動などによって、理性的な判断ができないさま」とあります。文字通り、目が見えなくなるほど強い感情。そんな感情に突き動かされて誰か・何かを思うのは、果たして幸せなことなのでしょうか。

フィクションの世界には、盲目的な愛情や友情、嫉妬心に憎悪などがしばしば登場します。良いものであれ悪いものであれ、五感を狂わせるくらい強烈な感情というのは、創作物のテーマにしやすいんでしょうね。今日は、あまりに強く恋と友情にのめり込んだ女性達の物語を紹介します。瑞々しく希望のある作風で有名な辻村深月さん。そんな彼女にしては珍しいイヤミス作品『盲目的な恋と友情』です。

 

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