子どもの頃、人形遊びが好きでした。私の子ども時代に主流だったのはタカラトミーから発売された「ジェニーちゃん」。細かなキャラクター設定やお洒落な洋服の数々に夢中になったことを覚えています。
その名前の通り人の形をしているだけあって、人間と人形の間には強い繋がりがあります。そのせいか、ホラー界では時として恐ろしいキーアイテムになることもありますね。最近読んだホラー小説にも、不気味な人形が登場しました。澤村伊智さんの『ずうのめ人形』です。
原稿を読んだ人間のもとに現れ、四日後に呪い殺す「ずうのめ人形」。オカルト雑誌でアルバイトをする藤間は、ある事件をきっかけに人形について書かれた原稿と関わることになる。次々と惨い死を遂げていく関係者たち。藤間の周囲に見え隠れする、顔を糸で覆われた日本人形。藤間はライターの野崎と、彼の婚約者であり霊能者の真琴とともに、怪異から逃れる方法を探り始める。だが、真の恐怖は、彼らの想像を超えるところにあった・・・・・
「~をした人間は〇日後に死ぬ」という、不幸の手紙や『リング』シリーズと通じる恐怖を扱った本作。ただ死ぬだけではなく、対象者には顔に糸を巻いた日本人形「ずうのめ人形」が見えるようになる上、死に様は目玉をくり抜かれるという悲惨なもの。そんな呪いを受けてしまった人間たちが、死を回避するための方法を探すというのが大まかなあらすじです。
本作は二つのパートが交互に描かれます。一つは前述したとおり、呪いを解除しようとする主人公たちの奮闘。もう一つは、主人公たちが読んだ「ずうのめ人形」の原稿です。その原稿には、複雑な家庭で育ち、孤独に生きる少女「里穂」の日常が綴られていました。一見、呪いとは無関係そうな少女の物語が「ずうのめ人形」とどう繋がってくるのか。ホラー小説はそれなりに読んでいる私にもまったく予想ができず、ページをめくる手が止まりませんでした。
じわじわと迫ってくる日本人形はものすごく怖い。ですが、それ以上に怖いのは、生きた人間の負の感情です。現実世界で呪いから逃れるため他人を巻き込む者たちや、原稿の中で里穂を苦しめる高圧的な父親と身勝手な母親。さらに一番恐ろしい存在がいるのですが、重大なネタバレになってしまうので語れません。この辺りの構成は、ホラーとしてだけでなくミステリーとしても非常に優れたもので、真相が分かった瞬間はきっと「おおっ」とのけぞってしまうことでしょう。
前作『ぼぎわんが、来る』で出てきた野崎&比嘉真琴のカップルが、未読の読者にも支障のない形で再登場してくれるのは、ファンとしては嬉しい限りです。さらに本作では、真琴のお姉さんの比嘉美晴も登場。比嘉姉妹シリーズ、今後もどんどん続いてほしいものですね。
本当に怖いのは呪いなどではなく・・・度★★★★★
最後の一ページが何とも意味深度★★★★☆
こんな人におすすめ
『リング』のような感染系ホラーが好きな人
シリーズなんですね。
わら人形より怖い日本人形のホラーミステリー~怖いもの見たさで読みたくなりました。男なので人形遊びはほとんどしませんでしたが、プラモデルや超合金ロボットに夢中になった子供の頃を思い出すかも。
おもちゃのロボットが剣や銃で襲ってくるような感じでしょうか?
未読の作家さんですが新しい開拓が出来そうです。
ホラーミステリー好きな私にビビッとハマる作品でした。
巷でよく聞く「~すると死ぬ」系ホラーに対する考察もなかなか興味深いです。
「リング」に関するネタバレに近い記述があるので、そちらを未読なら注意が必要かもしれません。