はいくる

「3分で仰天!大どんでん返しの物語」 このミステリーがすごい!編集部

ミステリーやサスペンスのレビューを読んでいると、しばしばこんな感想を目にします。「キャッチコピーや帯にでかでかと<衝撃のどんでん返し>と書くのはやめてほしい」「オチにどんでん返しがあると分かると、逆にネタバレになる」。確かに、どんでん返しが仕掛けられていると事前に分かることで、「ということは中盤まで疑われている容疑者は真犯人じゃないのね」などという予想が可能になってしまいます。これをネタバレととらえる人もいるでしょう。

とはいえ、「私はどんでん返しが読みたいんだ!」と強く望む読者にとっては、こういうコピーはむしろ有難いものです。かくいう私も、「どういうどんでん返しがあるんだろう」と期待するのが好きなタイプ。なので、この作品は終始ワクワクしながら読みました。「このミステリーがすごい!」編集部による『3分で仰天!大どんでん返しの物語』です。

 

こんな人におすすめ

どんでん返しがあるミステリー短編集が読みたい人

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仮面夫婦を待ち受ける驚愕の運命、恋人を見送る女が知った真実、恋人の出現によりズレてゆく友情の顛末、昏睡状態から目覚めた探偵が語る事件の真相、悪童が垣間見た絶望的な未来の秘密、立場の違う二人が苦しむ恋の行方、病気を誤魔化そうとする男が取った禁断の一手・・・・・人気作家が揃い踏み。驚きと企みに満ちたミステリー短編集

 

タイトルから分かる通り、どんでん返しがテーマのミステリーを集めた短編集です。一言でどんでん返しといっても、仕掛け方は十人十色。ラストも勧善懲悪系からほのぼのヒューマンストーリー、後味の悪いイヤミスと様々で飽きさせません。以下、印象に残った話をご紹介します。

 

「誰にも言えない犯罪の物語  中山七里」・・・妻とともに箱根旅行に出かけた主人公。主人公の浮気により夫婦仲はすでに冷え切り、最近では話しかけても無視されるばかり。今回の旅行は、妻のご機嫌取りのためのものだ。道中、廃神社に続く山道を見かけた主人公は、何か引っかかりを覚え・・・・・

中山七里さんらしい、安定感抜群のイヤミスです。主人公の末路自体は割と簡単に予想できるのですが、そこからさらに一ひねりしてあるところが心憎いですね。主人公も大概だけど、奥さんは奥さんでなかなかいい性格をしていた様子。こういうのを割れ鍋に綴じ蓋というのでしょうか。

 

「初恋の人  佐藤青南」・・・彼が死んだ。小学生の時に知り合った初恋の人であり、大人になってから、偶然再会した彼。付き合い始めてからも、つい怖気づいてしまい、彼からのお泊まりや旅行の誘いを断ってしまった。こんなに急に別れなくてはならないなら、勇気を出して、彼からの求めに応じれば良かった。後悔に苛まれる主人公に、一人の少女が話しかけてきて・・・・・

佐藤青南さんは、『ある少女にまつわる殺人の告白』が強烈すぎて、胸糞悪さマックスのイヤミス作家という印象が拭えません。ですが、本シリーズでは大抵、後味の良い話を載せてくれるんですよ。この話も例にもれず、切ないながらも希望と救いのあるラストで良かったです。こういう風に人を想えたら、きっと幸せなんでしょう。

 

「バニラ  林由美子」・・・大の仲良しだった朋夏と真理。まるで姉妹のようにべったり一緒だった二人の仲は、朋夏に彼氏ができたことですれ違い始める。真理とのお揃いファッションや延々と届くメールが、朋夏にとって重荷になってきたのだ。朋夏の胸中を知ってか知らずか、真理はたびたび手作りお菓子をプレゼントしてきて・・・・・

女同士の友情が、恋愛によってぎくしゃくしていく。イヤミス定番のシチュエーションですが、安直な愛憎劇にも、お決まりのハッピーエンドにもしていないところが好印象でした。図らずしも二人の間に割り込むことになった朋夏の彼氏が、よくある軽薄男ではなく、朋夏ともきちんと付き合っているという展開、意外と珍しい気がします。

 

「探偵羊ヶ丘氏の目覚め  友井羊」・・・探偵・羊ヶ丘は、れむという名の少女から依頼を受け、不可解な資産家殺人事件の調査を開始する。被害者は、れむの父親である真倉氏。羊ヶ丘は、とある事情により、れむが莫大な遺産を相続することに憤った真倉氏がれむ殺害を企て、それを察した妻により逆に殺されたという真相に気づく。だが、謎解きの前に、羊ヶ丘は真犯人である真倉夫人に殴られ、昏倒してしまった。意識を取り戻した羊ヶ丘は、やって来た真倉夫人に推理を突き付けるのだが・・・・・

序盤と終盤で、置かれた状況がくるりと反転する描写が印象的でした。よく考えたらとんでもない事態に陥ったわけですが、善性を失わない羊ヶ丘が素敵!ところで、私、出てくる人名すべてが眠りにまつわるものだということに、ずいぶん長く気づきませんでした。そのまんまなんだから気づけ、自分!!

 

「誰にも言えない未来の物語  柊サナカ」・・・富豪の息子であることをかさに着てやりたい放題の悪童・高明。今日も今日とて運転手に横柄に振る舞いながら、車で小学校まで送ってもらう。と、そこで車は謎の霧に包まれ高明は失神。目覚めると周囲は霧だらけで運転手も消えていたが、通りがかった小汚い男が助けてくれた。その際のやり取りを通し、高明はここが二〇七三年の未来世界であり、この浮浪者のような男が未来の自分だと知って・・・・・

こういう小気味良い話は大好きです。冒頭の高明が、微笑ましいタイプの悪ガキではなく、本気で迷惑な問題児な分、ラストの真相発覚時のカタルシスは強烈でした。でも、高明の場合、彼が現状のままではいかないと憂い、対処してくれる大人がいるわけですから、これで良かったのかもしれませんね。

 

「銀河喫茶の夜  黒崎リク」・・・大好きな祖父が純喫茶に連れて行ってくれることになり、有頂天の<私>。大人の店ということで今まで連れて行ってもらえなかったが、ずっと憧れだったのだ。祖父と共に入った店はとても素敵で、コーヒーも美味しく、<私>は上機嫌だ。と、そこで<私>の目に、窓の外の川が映り・・・・・

祖父が主人公を連れて行く純喫茶や、その後の川の様子がファンタジックなムード満点で、想像するだけでうっとりしてしまいました。でも、まさかラストがそんなことになっていたなんて・・・・・これをイヤミス扱いするかどうかは意見が分かれそうですが、私は救いがあると信じたいです。

 

「まぶしい夜顔  林由美子」・・・主人公は家族のいる男と、二年もの間、不毛な関係を続けている。将来のことなど考えられるはずもなく、人目を憚ってデート一つできず、アパートにこもって二人きりで過ごす日々。彼のことは本当に好きだが、先のない関係に疲れ切ってしまった。虚しさを覚えた主人公は、ついに彼に「もうここには来ないで」と言い渡して・・・・・

あー、なるほど!!確かに、主人公の恋人が〇〇だという記述はなかった!この手の不毛な恋愛ストーリーは虚しい結末になることが多い分、ラストの二人の様子は熱かったです。まあ、よく考えたら、今後、相当にややこしいことになりそうな状況なわけですが・・・・・物語なのですから、ここは健闘を祈る!ということにしておきましょう。

 

「誰にも言えない感染症の物語  岡崎琢磨」・・・コロナが猛威を振るうある日、岩手在住の銀行員・充は、発熱と味覚障害に見舞われる。もしかして、先週末、会社からの指導をよそに友人たちと宮城へドライブした際にコロナ感染したのだろうか。岩手県は今なお感染者ゼロを貫いているというのに、世間体を重んじる銀行員の俺が、レジャーのせいで感染しただなんてバレたら一大事。幸い、症状は軽いので、なんとか理由をつけて数日休めばきっと回復するだろう。とはいえ、このご時世、体調不良で欠勤すればすぐPCR検査を受けろと言われるはず。充は必死で会社を休む理由を考えるが・・・・・

佐藤青南さんとは逆に、岡崎琢磨さんはコージーミステリーのイメージがある割に、本シリーズだとやけにダークな作風になる気がします。この話もまさにそれで、オチのあまりのブラックさに「えっ」と声が出そうになりました。怪しまれず欠勤したい気持ちは分からないでもないけれど、まさかそんなことに・・・・・主人公を追い詰めるのがコロナ禍というところ、執筆時の世相を感じますね。

 

このシリーズ全般に渡って言えることですが、他の短編集にすでに収録済みの話が多いです。どんでん返しは初見の驚きが命!と思って読むとガッカリするかもしれません。収録作品のタイトルはネットでも公開されているので、気になる方は事前にチェックしておくことをお勧めします。

 

短時間で読めてクオリティの高い話ばかり度★★★★★

解釈の余地がある話も結構あります度★★★★☆

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