噂話は好きですか?たとえ嫌いな方でも、人生で一度や二度、何らかの噂話を耳にしたことがあると思います。昔からある有名どころでいえば、口裂け女や人面犬、赤マントなどでしょうか。
本来なら、ただのお喋りの一環であるはずの噂話。では、もしそれが真実となったらどうなるのでしょう。そんな噂の恐怖を扱った作品といえばこれ、直木賞作家である荻原浩さんの「噂」です。
「黒いレインコートを身にまとい、若い女性を殺して足を切断する殺人鬼・レインマン。レインマンから逃れるには、とある香水を付けること」それは、海外ブランドの香水を売り出すため、広告会社が仕掛けた罪のない噂のはずだった。噂通り、足を切り落とされた少女の死体が見つかるまでは・・・・・女性を殺し、冷酷に足を奪い取る犯人とは一体何者なのか。事件を追う刑事たちの戦いと、最後に待つ残酷な真実を描いたサイコサスペンス。
噂話の殺人鬼が現実に現れて人を殺す、しかも足を切断するという残虐な方法で・・・怖い話に弱い人なら、震え上がってしまいそうな設定です。その噂の作られ方がこれまた説得力たっぷりで、読みながらふむふむと頷いてしまいました。もしかしたら、こういった戦略を取っている広告や企画の会社ってけっこう多いのかもしれません。
こういう「実際にありそうなこと」を作品に綺麗に落とし込むところが、荻原浩の筆力の凄さ。事実、他愛ない噂が暴走し、大騒ぎを引き起こした例は過去にもあります。高校生のお喋りが原因となった豊川信用金庫事件のような取り付け騒ぎがいい例でしょう。それを考えると、本作で起こる事件も、あり得ないことだと言い切れはしないのではないでしょうか。
加えて魅力的だと感じたのが、思わず拍手してしまいそうなほど秀逸な登場人物たちのキャラクター造形。特に事件を追う刑事コンビ、男やもめの所轄刑事・小暮と、本庁から来たシングルマザーの女性刑事・名島の凸凹ぶりがとても面白かったです。最初はぎくしゃくしていた二人が徐々に名コンビへと変わっていく様子、その小気味良いやり取りの数々は、一読の価値ありですよ。
本書の文庫版の帯には、「衝撃のラスト一行に瞠目」というコピーが書かれていました。その言葉通り、最後の最後、まさにラスト一行にものすごい衝撃が待ち構えています。間違っても、ちらっと先に見てしまうことのないように、ページをめくる時は注意してくださいね。インターネットで作品の評価を調べる時なども、うっかりネタバレレビューを読まないよう、くれぐれもお気をつけて!
衝撃のどんでん返し度★★★★☆
最後の一ページから見ちゃいけない度★★★★★
こんな人におすすめ
・ラストで心底ビックリしたい人
・イヤミス好きな人
初めて読んだ時、ラストのひと言に衝撃を受けたものです。
それがきっかけで荻原さんの作品を追いかけるようになりました。
去年再読した際にはそこまで衝撃はなかったですがやはり凄い作品という印象を改めて持ちました
最初に読んだ荻原作品です。
話そのものもさることながら、やっぱりインパクトあるのはラスト一行!
どんでん返し系の小説はさんざん読みましたが、これを超す衝撃はなかなかないと思います。