友達って大切です。それを否定する人は滅多にいないでしょう。私自身、これまで何度となく友達に助けられてきました。
でも、悲しいかな、友情とは必ずしも純粋な好意で成り立つとは限らないもの。見栄や優越感、対抗意識から成り立つ友情もまた存在します。女同士の友情の恐ろしさを描いた作品と言えばこれ、数多くのドラマ・映画の原作者としても名高い新津きよみさんの「女友達」です。
インテリアコーディネーターとして働く二十九歳独身のヒロイン。仕事にはそれなりにやり甲斐を感じつつ、先の見えないシングルライフに焦りと孤独を感じている。そんなある日、ヒロインはふとしたきっかけで、近所に住む同い年の女性・亮子と友達になった。自分より容姿も社会的地位も劣る女友達に優越感を抱くヒロインだが、ある日を境に亮子が見違えるほど美しくなったことで、関係に変化が生じ始める・・・・・女の友情から引き起こされる惨劇を描いた傑作サイコサスペンス。
何が巧いって、女性同士のちょっとした嫉妬や誤解が積み重なり、取り返しがつかない展開になっていく描写が抜群に巧い!サスペンス小説の場合、なんだかんだ言いつつ「これは現実には無理があるよな」と思わせられることもしばしばですが、本作は別。特にこのご時世、読みながら、「実際に起こってもおかしくないかも・・・」と本気でゾクリとしてしまいました。
中心となる二人の女性のキャラクター造形も光っています。美人でセンスを生かした仕事を持つ一方、プライドが高く意地っ張りなヒロイン。料理上手で手先も器用ながら、容姿は今一つ垢抜けず、どこかピントのずれた行動を取る亮子。対照的な二人の描き方がとても丹念で、どちらにも共感と反感の両方を抱いてしまいました。
あらすじからも分かる通り、この二人の友情は優越感と劣等感から成り立っています。ここで単純に、「お洒落な生活を送る美人のヒロインが、もっさりした女友達を見下すだけ」としないところが、新津きよみさんの凄いところ。昔の恋人から痩せ気味のスタイルをからかわれたことのあるヒロインが、ふっくらと女性的な体型の女友達に内心で嫉妬してしまう心理など、女性なら誰でも「ああ、あるある」と頷いてしまうのではないでしょうか。
ちなみに、作者である新津きよみさんの夫は、同じく小説家の折原一さん。女性の心理描写に重きを置く奥様と違い、旦那様は叙述トリックをふんだんに使った作風が特徴です。お二人が共同執筆した作品もあるので、興味がある方は、ぜひ探してみてください。
女の友情って難しい度★★★★☆
こうなる前に引き返せなかったのか・・・度★★★☆☆
こんな人におすすめ
・女性同士の緊迫感あるやり取りに興味がある人