はいくる

「5年3組リョウタ組」 石田衣良

小学校時代からずいぶん長い間、私の将来の夢は「学校の先生」でした。幸いにして良い先生に当たることが多く、人間関係でもさほど悩んだことがなかったため、「学校で働くなんて楽しそうだな」と思っていたのです。結局、教職に就くことはなかったものの、教師に憧れることができるなんて、今思えば恵まれた学校生活を送っていたんですね、私。

もちろん、教師という職業がどれだけ大変なものか、今は分かっています。子どもの人生を預かり、教え導く。その責任の重さ、肉体的・精神的なプレッシャーの大きさは、言葉ではとても表現しきれません。今日は、小学校教師の主人公の成長を描いた奮闘記、石田衣良さん『5年3組リョウタ組』をご紹介します。

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教室から逃亡する生徒、職員室でのパワハラ問題、小学生にかかった放火疑惑、テストの結果を巡って険悪化するクラス・・・・・茶髪にアクセサリーがトレードマークの小学校教師・中道良太の毎日にはトラブルが一杯。理想通りにはいかない教師生活に頭を抱えつつ、それでも良太は教え子たちのために奮闘する。若き教師の戦いを通して日本の教育現場の悲喜こもごもを描く、清々しい成長物語。

 

読んでいる間は知りませんでしたが、本作は「現代版坊ちゃん」というキャッチコピーが付いていたそうです。それを知って再読してみると、なるほど、一筋縄ではいかない生徒達といい、職員室での複雑な人間関係といい、まさに『坊ちゃん』の21世紀版。こういう教育界の事情って、百年前から変わらないものなのかもしれませんね。

 

主人公の良太は二十五歳。茶髪とドクロモチーフのアクセサリーで出勤する、やや軽めの印象のある青年教師です。金八先生のような情熱も、『GTO』の鬼塚のような肝の太さもない良太ですが、その平凡さゆえ、子どもと同じ目線に立つことができます。この未成熟ながら真っ直ぐな良太のキャラがとても好印象。共に問題解決に挑むクレバーな同僚教師・染谷との息の合いっぷりも見ていて楽しく、まさに石田衣良ワールドを代表するコンビと言えるでしょう。

 

全体的に柔らかい文章で物語は進むものの、起こる問題はどれもシビアなものばかり。高圧的な親に押し潰されそうになる子ども、少年犯罪、教師間のいじめetcetc・・・運動下手で体育の時間に肩身の狭い思いをしていた私は、クラス対抗テストのせいで成績不振の生徒が責められる場面など、読んでいてとても辛かったです。素直で誠実だけど、基本的に凡人である良太がこれらの問題をどう解決するか。ネタバレ防止ために多くは語りませんが、どのエピソードでも教育の難しさと明るさを落とし込んだ良いラストを迎えていたと思います。

 

短編形式ということもあってさくさく読めますし、読後感はとても爽やか。あとがきの言葉にも作者の思いやりが溢れていて素敵です。熱血先生が主人公の教育ものが苦手な人でも、これならきっと大丈夫でしょう。本棚に並べておいて、定期的に読み返したくなる良作でした。

 

どの学校にもこういう先生がいたらなぁ度★★★★☆

学校が好きと言えるのは幸せなこと度★★★★★

 

こんな人におすすめ

学校を舞台にした爽やかな小説が読みたい人

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