子どもの頃から海外ドラマや洋画が好きだった私の憧れの場所、それはショッピングモールです。当時、私が知っている小売店といえば、日用品ならスーパーで、改まった品ならデパート。それに不満があったわけではありませんが、画面の中で海外のティーンエイジャーたちが言う「土曜にショッピングモールで待ち合わせしましょう」「モールに新しいお店ができたって」などというやり取りが、やたらお洒落に思えたものです。
現在では、日本各地にたくさんのショッピングモールが存在します。買い物ができ、食事を済ませられ、映画やゲームや習い事を楽しむことができる性質上、昼夜問わず大勢の人々でごったがえすることも珍しくありません。でも、そんな中にこんなショッピングモールがあったとしたら・・・・・気軽に利用することを躊躇ってしまうのではないでしょうか。今回は、ヨシモトミネさんの『このショッピングモールは迷子を歓迎しています』をご紹介したいと思います。
こんな人におすすめ
モキュメンタリーホラーが好きな人
さあ、ともに詫びましょう---――地域住民の憩いの場であるショッピングモール。常に明るく賑やかであるはずのそこには、奇妙な噂があった。客が連れ去られるコーヒーショップ、人語を喋る犬が生まれるペットショップ、利用者が消失する試着室、読者の正気を失わせる本が並んだ本屋、時折流れるあまりに異様な迷子放送。失踪した妹を探す少年は、ふとしたきっかけで、ショッピングモールに秘密がある可能性にたどり着く。協力者を得て調査を進める少年だが、彼が見つけたのは、土地に染みついた罪と因縁の記憶だった・・・・・・謎が謎を呼ぶモキュメンタリーホラー長編
カクヨム出身の作家さんの中で、ダントツで好きなヨシモトミネさんの新刊です。前作『この会社は実在しません』の舞台は会社でしたが、本作で舞台となるのはショッピングモール。きらきら活気溢れる様子と、そこで起こる怪事件の不気味さとのギャップが、とびきり胸糞悪くて面白かったです。
ストーカーに狙われた妹を守るため、一家で引越しを済ませたばかりの高校生・颯太。ひとまず平穏な日々を送っていた彼は、ある時、駅前のショッピングモールに関する奇妙な噂を知ります。曰く、ショッピングモール内の店舗ではたまに異様な事件が起き、人が消えることもあるとのこと。ただの噂だろうと思いきや、颯太は実際にショッピングモール内にあるペットショップで、異形の犬が「おにがくるぞ」と喋った直後、急死する場面に遭遇。一体あれが何だったのかは分からないが、とにかくあのショッピングモールには関わらないようにしよう。そう決意した矢先、なんと妹・涼香が当のショッピングモールに行きたがってしまいます。ストーカーに付きまとわれ、恐怖に震えていた涼香が気力を取り戻しつつあるのに、水を差したくない。颯太は十分に用心しつつショッピングモールに同行しますが、ほんの一瞬、目を離した隙に涼香は消えてしまいました。涼香失踪の謎は、きっとあのショッピングモールに隠されているはず。颯太はクラスメイトらの力を借りつつ調査を開始するのですが・・・・・果たして彼は、妹を取り戻すことができるのでしょうか。
『この会社は実在しません』でも同様のことを思いましたが、舞台となる場所で頻発する怪奇現象の描写がとにかく不気味です。颯太が実際に目にする、肉塊のような犬が人語を喋ってから急死する場面は言うまでもなく、施設内に貼られた異様なポスターとか、異形の女がピアノを弾く楽器店とか、時折流れる不気味すぎる迷子案内(この迷子、明らかに人間じゃない)とか、ゾッとさせられる描写のオンパレード。本作はモキュメンタリーホラーなので、これらの怪現象すべてを主人公チームが体験するわけではなく、動画や噂話、配布物といった形で読者に提示されます。感情を挟まない、無機質な描き方が恐怖感を際立たせていました。
ただ、主人公チームがどんどん追い詰められていく『この会社は実在しません』と比べると、本作の颯太には心強い味方がいるので、比較的安心して読めます。白眉はやはり、調査中に知り合う凄腕霊能力者のおばあさんでしょう。この方、佇まいといい物言いといい実績といい、ホラー作品お約束<怪異と渡り合えるお年寄り>そのもので、頼もしいことこの上なし。次点は、中盤以降で登場する<おまわりさん>。一応、存在としては怪異側に属するのでしょうが、実はこの<おまわりさん>は颯太と縁があって・・・・クライマックスでの邂逅シーンは、思わず涙ぐみそうになりました。ヨシモトミネさんのホラーって、怪異はどこまでいっても怪異であり、人間とは相容れないという印象がありましたが、こういう清涼剤的存在がいるとぐっと彩り豊かになりますね。
また、本作の場合、怪異だけでなく人間側の狂気や悪意の描写も秀逸です。目を付けた女生徒に一方的につきまとうストーカー教師とか、我が子への歪んだ妄執を捨てきれない母親とか、親切面して年少者で性欲を発散させようとする大人とか、「いるよなぁ」とため息をつきたくなる輩が次々出てくるんですよ。こういう連中がショッピングモールに取り込まれる場面は、不謹慎ながら、ちょっと溜飲が下がる思いでした。最後まで真っ当さを捨てなかった颯太たちの姿が救いです。
なお、本作は『この会社は実在しません』と世界観が共通しています。未読でも構いませんが、前作読了済みだと、かなり嬉しいサプライズがあります。前作もとても面白いモキュメンタリーホラーなので、ご興味のある方はぜひ、読まれてみてください。
どこにでもあるショッピングモール描写がかなり怖い度★★★★★
これってもしやハッピーエンド・・・??度★★★★★







