<女三界に家なし>という言葉があります。<三界>とは仏教用語で<全世界>のこと。「女は子どもの頃は親に従い、結婚してからは夫に従い、老いてからは子どもに従うもので、世界のどこにも落ち着ける場所などないのだ」という意味だそうです。「そんな状態はおかしいから、決して甘んじてはいけないよ」と続くわけでもなく、ここで終わりというところに、旧来の価値観の恐ろしさを感じます。
こんな考え方はもう過去のものだ!と言いたいところですが、残念ながら、そうとも言い切れない現実があることは事実。特に<母親>に対しては、時として同性からも我慢と忍耐を強いられる傾向にある気がします。女であることに加え、親としての責任が生じるからでしょうか。とはいえ、上記の教えが生まれたのは二千年以上前だからもうどうしようもないけれど、現代の女がそうそう服従してばかりとは思えません。あんまり母親を舐めていると、予想外の事態に出くわしてしまうかも・・・・・今回ご紹介するのは、そんな驚愕の事態を描いた短編集、乃南アサさんの『マザー』です。
こんな人におすすめ
家族をテーマにしたイヤミスに興味がある人