美輪和音

はいくる

「強欲な羊」 美輪和音

ふと、お気に入りの作家さんたちを思い浮かべてみて、あることに気付きました。「私が好きな作家さんって、小説家と脚本家を兼業していることが多いな」と。たとえばドラマ『放送禁止シリーズ』『富豪刑事』の脚本家であり、『東京二十三区女』『出版禁止』の作者でもある長江俊和さん。あるいは、『相棒シリーズ』で脚本を担当し、『幻夏』を書いた太田愛さん。もともと脚本家は小説家と兼ねることが多い職業ですが、映像作品を担当したことのある作家さんは、視覚的に映える描写力を持っている気がします。

そんな小説家兼脚本家業を続ける作家さんの中で、私の一押しは美輪和音さん。映画『着信アリ』の脚本家であり、『ハナカマキリの祈り』や当ブログでも紹介した『ウェンディのあやまち』等、切れ味鋭いサスペンス小説を世に送り出しています。今日は、そんな美輪さんの小説家デビュー作『強欲な羊』をご紹介したいと思います。

 

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はいくる

「ウェンディのあやまち」 美輪和音

文芸作品の中には<読むのが嫌になる小説>というものが存在します。決してつまらないわけなく、文章力や構成はとても優れているものの、あまりの悲惨さや恐ろしさにページをめくるのが怖くなる、という意味です。昨今のイヤミスブームの影響もあってか、一時期に比べるとこの手の作品が増えた気がします。

私はフィクションならけっこう耐性あるのですが、それでも「読むのが辛い・・・」と思った作品がいくつかあります。ダントツ一位は、海外作品ですが、ジャック・ケッチャムの『隣の家の少女』。国内だと、歴史を感じさせる吉村昭さんの『羆嵐』や遠藤周作さんの『沈黙』、現代ミステリーなら宮部みゆきさんの『模倣犯』、東野圭吾さんの『さまよう刃』など、どれも本を家に置いておくのさえ辛いと思うくらい衝撃的でした。最近読んだこの作品も、胸をえぐられるようなショックを受けました。小説家であると同時に脚本家としての顔も持つ、美輪和音さん『ウェンディのあやまち』です。

 

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