かつて、漫画家の藤子・F・不二雄さんは、SFのことを<S(すこし)F(不思議)>と解釈しました。その言葉通り、この方の作品は『ドラえもん』に代表されるように、日常の中に不思議要素が混ざっていることが多いです。『スターウォーズ』のような壮大なSF叙事詩もいいけれど、身近なところから非日常を感じさせてくれる作品もまた面白いですよね。
日常の中に非日常が混じった作品は<エブリデイ・マジック>と呼ばれ、海外でも広く認知されています。一般家庭に魔女がやって来る『メアリー・ポピンズ』、森の中に不思議な生き物が棲むジブリ映画『となりのトトロ』、特殊な力を持ちながら一般社会に交じって生きる人々を描いた恩田陸さんの『常野物語』等々、名作がたくさんあります。今回取り上げる作品も、ジャンル分けするとこれに入るのかな。芦沢央さんの『魂婚心中』です。
こんな人におすすめ
現実と少し違う世界のSF短編集に興味がある人
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皆様、明けましておめでとうございます。無事に2021年を迎えた当ブログですが、残念ながら、世界的に見ると幸せ一杯の新年というわけにはいきません。コロナウィルスは今なお猛威を振るい続けており、医療従事者やサービス業者など、この災厄で心身共に疲弊した人々の数は天井知らず。医者でも研究者でもない私にウィルスの駆除方法など分かりませんが、三密を避け、手洗いうがいを心がけ、一日も早い騒動の収束を願うばかりです。
そして、こういう時だからこそ、ウィルス対策を意識しつつ極力いつも通りの日常を送りたいと思っています。私にとって欠かせない日常の一つ、それが読書。一時期、コロナ対策で図書館が閉鎖されていたことがあるせいか、「本は読める内に読めるだけ読んでおく」という習慣がすっかり身に沁みついてしまいました。そんな私が新年最初の一冊に選んだ作品はこれ、芦沢央さんの『汚れた手をそこで拭かない』です。
こんな人におすすめ
人の心の闇を描いたミステリー短編集が読みたい人
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大人はしばしばこういう言葉を口にします。「子どもはいいな。何の悩みもなくて」。確かに、必死で生活費を稼いだり、育児や介護に追われたりする大人からすれば、子どもはいつも屈託なく無邪気に見えるかもしれません。というか、そうあって欲しいというのが、大人の本音なのでしょう。
当たり前の話ですが、子どもに悩みがないなどというのは間違いです。世界中には、稼ぎ手として必死に働かなければならない子どもが大勢います。まがりなりにも平和で豊かとされている日本にも、虐待や貧困、いじめなどに苦しむ子どもの数は数えきれません。それに、授業や習い事、学校行事に関するあれこれだって、子どもにとっては大きな悩み事になり得ます。そんな子ども達が抱える痛みと苦しみについて、この作品を読んで考えてしまいました。芦沢央さんの『僕の神さま』です。
こんな人におすすめ
子ども目線の切ないミステリーが読みたい人
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「この作家さんはこういう作品を書く」というイメージってあると思います。綾辻行人さんなら叙述トリックを駆使した新本格ミステリーだし、瀬尾まいこさんなら心温まる成長物語、唯川恵さんなら女性主人公の恋愛模様etcetc。人それぞれ好きなジャンルがありますから、「これこれこんな物語を読みたい時はこの人の小説がお薦め」という知識があれば、作品選びが楽になります。
その一方で、「この作家さんってこんな小説も書くんだ!!」と驚かされることもあります。私は『和菓子のアン』『女子的生活』などの爽やかな作風のイメージがあった坂木司さんが、『短劇』『何が困るかって』で意外にブラックな小説も書くと知り、びっくりしたものです。こういう驚きもまた、読書の醍醐味の一つではないでしょうか。びっくりと言えば、芦沢央さんの『火のないところに煙は』。芦沢さんの新境地、楽しませてもらいました。
こんな人におすすめ
実話風ホラー小説が読みたい人
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大抵の図書館には「予約」というシステムがあります。本を確実に借りることができるよう予め予約しておく方法で、人気作家の新刊や大作映画の原作本などには予約が殺到します。予約件数が数百ということも決して珍しくなく、その場合、本が手元に届くのは何カ月も先ということにもなりかねません。
小学生の頃から図書館通いを初めてウン十年。ほとんどの場合、予約で出遅れてしまっていた私ですが、先日初めて「予約一番目をゲット」という出来事を経験しました。大好きな作家さんの新刊なので、喜びもひとしおです。それがこれ。芦沢央さんの『バック・ステージ』です。
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小説を面白いものにするためには、もちろん内容が大事です。ですが、それと同じくらい、タイトルが魅力的であることも大事だと思います。書店や図書館で本棚の前を歩き、タイトルに惹かれて本を手に取ることもあるでしょう。実際、内容を知らないにも関わらず、「タイトルが面白そう」という理由で読んだ本もかなりあります。
海外作品であればダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』やアガサ・クリスティ―の『そして誰もいなくなった』、日本の作品なら恩田陸『麦の海に沈む果実』や東野圭吾『むかし僕が死んだ家』などなど、タイトルが魅力的であるだけでなく、そこに込められた意味も味わい深いんですよ。ここ最近読んだ小説の中で、タイトルの意味に唸ってしまった作品はこれ。芦沢央さんの『獏の耳たぶ』です。
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数年前から「終活」という言葉をよく見聞きするようになりました。文字通り「人生の終わりのための活動」のことで、葬儀や財産分与に関する準備をしておいたり、身の回りのものを片付けておいたりするようですね。少子高齢化が進む現代社会においては、とても重要な意味を持つ活動だと思います。
終活をテーマにしたフィクション作品といえば、ジャック・ニコルソンとモーガンフリーマンが出演した『最高の人生の見つけ方』、アカデミー賞で外国語映画賞を受賞した『おくりびと』、伊丹十三の監督デビュー作である『お葬式』など、映画が多い気がします。小説ではないのかな・・・と思っていたら、面白いものを見つけました。芦沢央さんの『雨利終活写真館』です。
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