瀬川ことび

はいくる

「夏合宿」 瀬川ことび

すべてのジャンルにいえることですが、ホラー作品には定番のシチュエーションというものが存在します。<吹雪の山荘から出られなくなる>とか<ゲーム感覚で呪いの儀式を行ってしまう>とか<真夜中の学校に忘れ物を取りに行く>とかいうやつですね。最後の一つは実際に私も友達と一緒にやったことがあるのですが、怖いというより「おおっ!まさか本当に、こんなホラーお約束の状況に直面できるなんて!」と、妙に感動したものです。

お約束は、人気があって面白いからこそお約束たりえるもの。そして、そのお約束のシチュエーションの中でどうオリジナリティを出せるかが、作者の腕の見せ所です。その点、アメリカ映画『キャビン』は、ホラーあるあるネタをふんだんに取り入れつつ、予想の斜め上をいくトンデモ世界を描いていて、とても面白かったです。それからこれも、一ひねりされた展開を楽しむことができました。瀬川ことびさん『夏合宿』です。

 

こんな人におすすめ

ユーモラスなホラー短編集を読みたい人

続きを読む

はいくる

「厄落とし」 瀬川ことび

<ホラーコメディ>というジャンルがあります。文字通り、ホラー(恐怖)とコメディ(喜劇)両方の要素がある作品のことで、不気味なのに妙に笑える展開を迎えるというパターンが多いです。正反対のジャンルのようで、意外と相性がいいんですよ。

このホラーコメディ、絵的に映えるシチュエーションが多いからか、映像作品でよく見るジャンルなような気がします。私が見たものだと、二〇一〇年の洋画『タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら』は日本でも高評価を獲得しました。一〇〇%善人にもかかわらず、風体や振る舞いのせいで殺人鬼と勘違いされてしまう二人組のドタバタが最高に面白かったです。小説だと、ブログでも取り上げた藤崎翔さんの『お梅は呪いたいシリーズ』も、楽しく笑える傑作でした。それからこれも、質の高いホラーコメディです。瀬川ことびさん『厄落とし』です。

 

こんな人におすすめ

ユーモラスなホラー短編集を読みたい人

続きを読む

はいくる

「お葬式」 瀬川ことび

クリエイティブな世界には、複数の名義で作品を発表されている方がしばしば存在します。理由は人それぞれでしょうが、一番は、名前に付きまとうイメージや先入観を払拭するためではないでしょうか。〇〇先生は恋愛漫画とか、△△先生はロックミュージックとか、色々イメージがありますからね。

もちろん、それは小説界においても同じ。乙一さんは<中田永一><山白朝子>、藤本ひとみさんは<王領寺静>等々、複数の名義で活動されている作家さんは多いです。この作家さんも別名義で活動中だということを最近になって知りました。瀬川ことびさん『お葬式』です。

 

こんな人におすすめ

ユーモラスなホラー短編集を読みたい人

続きを読む