岸田るり子

はいくる

「月のない夜に」 岸田るり子

古来、双子というのは神秘的な存在として扱われる傾向がありました。母親の胎内で一緒に育ち、一緒に生まれてくるという状況や、(一卵性の場合)そっくりな容姿などが人に謎めいた印象を与えたのでしょうね。現代でさえ、「双子の片方が怪我をするともう片方も痛みを感じる」「生後すぐ離れ離れになってもそっくりな人生を歩む」などといったミステリアスな説まであるほどです。

フィクションの世界において、双子は「他人には分からない絆や確執を持つ存在」として描写されることが多い気がします。ぱっと思いつく限りでは、双子の少女の入れ替わりをテーマにしたエーリッヒ・ケストナーの『ふたりのロッテ』、泥棒と双子の兄弟の同居生活を描く宮部みゆきさんの『ステップファザー・ステップ』、ルイ十四世双子説と鉄仮面伝説を絡めた藤本ひとみさんの『ブルボンの封印』などなど。今回取り上げる小説にも、複雑な絆を持つ双子が登場します。岸田るり子さん『月のない夜に』です。

 

こんな人におすすめ

サイコパスの登場する心理サスペンスが読みたい人

続きを読む

はいくる

「味なしクッキー」 岸田るり子

「ジャケ買い」という言葉があります。意味は「内容を知らないCDや本などを、パッケージのみに惹かれて購入すること」。何しろ内容を知らないわけですから、まるで好みに合わない商品を買ってしまって心底後悔することもある、それがジャケ買いです。

反面、ジャケ買いした商品が予想以上の良作だった場合、その喜びは大きいです。私の場合、人生初のジャケ買いはCDで、松任谷由実さんの『THE DANCING SUN』。「Sign of the Time」「砂の惑星」「春よ、来い」といった名曲揃いで、すっかりユーミンファンになった記憶があります。もちろん、ジャケ買いした本も色々ありますが、今回はその中の一冊を紹介します。岸田るり子さん『味なしクッキー』です。

続きを読む

はいくる

「出口のない部屋」 岸田るり子

密室。ミステリー好きなら、まず間違いなく一度は目にしたことのあるキーワードでしょう。閉ざされた部屋、出入り不可能な状況、その中で起こる謎めいた事件。江戸川乱歩の『D坂の殺人事件』をはじめ、密室を扱った推理小説はたくさんあります。

とはいえ、たくさんありすぎて、ちょっとやそっとの密室ものではもはや読者が驚かなくなったことも事実。現実にはなかなか実現困難なケースが多いこともあって、一歩間違うと批判・冷笑の対象にもなりかねません。そこで今回は、一風変わった密室が登場する小説をご紹介します。岸田るり子さん『出口のない部屋』です。

  続きを読む

はいくる

「白椿はなぜ散った」 岸田るり子

誰かに恋をすること、その人を大切に想うことって素敵です。小説でも漫画でも映画でも、恋の甘さや美しさを描いた作品はたくさんあります。

でも、恋愛って本当に甘く美しいだけのものでしょうか?誰かを想う気持ちがやがて歪み、暴走していくこともまたありうるでしょう。というわけで、今回ご紹介するのは、医学分野にも造詣の深い作家・岸田るり子さん「白椿はなぜ散った」です。

続きを読む