ものすごく忙しい時やトラブルが続いた時、ふとこんな風に思ったことはないでしょうか。「自分がもう一人いればいいのに・・・」と。鏡に映したかのようにそっくりな自分の分身。そんな存在がいれば、さぞ便利なように思えます。

とはいえ、小説でも漫画でも映画でも、自分の分身が出てきたら大抵困った目に遭うというのがお約束。考えてみれば当然の話ですが、<そっくりなロボット>ではなく<分身>なのですから、意思もあれば欲もあるはず。そう簡単に奴隷のように扱えるはずありません。オルカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』でも山本文緒さんの『ブルーもしくはブルー』でも、分身は混乱と不安をもたらしました。SFやホラーのジャンルで扱われやすいテーマなので、今回はミステリー作品を取り上げたいと思います。北川歩実さん『もう一人の私』です。

 

こんな人におすすめ

後味の悪いミステリー短編集が読みたい人

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