自分で言うのもなんですが、私はけっこう信心深い人間です。祖父母の家によく出入りしていたせいもあるのか、里帰りするとまず神棚と仏壇に手を合わせますし、厄年や大きな旅行に出かける時は必ずお祓いをしてもらいます。神仏に手を合わせる。簡単な動作ですが、なんだか落ち着いた気持ちになってきます。
日本は神仏と距離の近い国であるものの、神社やお寺がテーマになった小説はそれほど多くない気がします。ぱっと思いつくのは三島由紀夫氏の『金閣寺』ですが、あれは神仏の力をテーマにしているわけじゃないし、かといって神秘のパワーで神々が大暴れする!みたいな小説はあまり読まないし・・・と思っていたら、いい作品を見つけました。花房観音さんの『神さま、お願い』です。
こんな人におすすめ
人間の悪意を描いたホラー短編集が読みたい人
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私が初めて京都を訪れたのは、高校の修学旅行の時です。あまり滞在時間が長くなかったため、清水寺や三十三間堂といった有名な観光地を数カ所回っただけですが、凛とした情緒溢れる佇まいが強く心に残りました。東京や大阪とはどこか違う雅やかな雰囲気、それこそが京都の魅力だと思います。
あの独特の雰囲気のせいか、京都を舞台にした小説は繊細さと濃厚さ、両方を併せ持つものが多い気がします。『源氏物語』などまさにその代表格ですし、映画化もされた渡辺淳一さんの『愛の流刑地』、サスペンスホラーの金字塔である貴志祐介さんの『黒い家』等々、ねっとりとした人間模様が迫ってくるような作品ばかりです。というわけで今回は、京都を舞台に濃密な愛憎劇が展開される小説をご紹介します。花房観音さんの『偽りの森』です。
こんな人におすすめ
京都を舞台にしたドロドロの人間模様に興味がある人
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昔、家にギリシア神話の本が置いてありました。子ども向けにリライトされたバージョンだったので、私へのプレゼントか何かだったのかもしれません。子ども向けとはいえ当時の私にはショッキングなシーンが多く、驚いた記憶があります。
ギリシア神話に限らず、神話はしばしば残酷だったり生臭かったりするものです。それは、かつて神話が教訓や警告の役目を果たしていたからかもしれませんね。恐ろしいといえば、日本神話だって負けてはいませんよ。今日は、日本神話に登場する禍々しい鬼をテーマにした作品を紹介します。団鬼六賞で文壇デビューを果たした小説家、花房観音さんの『黄泉醜女』です。
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