有栖川有栖

はいくる

「幻坂」 有栖川有栖

私の昔の職場は、大阪の会社と合併したせいもあって大阪出身の社員が多く、大阪への出張も頻繁にありました。職種がサービス業だったことも関係しているでしょうが、大阪という町やその出身者には、明るく賑やかなイメージがあります。実際、大阪を舞台にした小説も、伊集院静さんの『琥珀の夢』や万城目学さんの『プリンセス・トヨトミ』など、スケールが大きい陽性の作品が多い気がします。同じ関西でも、京都を舞台にした作品がしっとりした雰囲気になりがちなのと対照的と言えるでしょう。

とはいえ、当たり前の話ですが、人が生活する場である以上、いつもいつも明るくパワフルでいられるわけがありません。活気溢れる大阪という町にも、しんみりした部分や切ない部分がたくさんあります。今日ご紹介するのは、有栖川有栖さん『幻坂』。しっとりと胸に染み入るホラーファンタジーでした。

 

こんな人におすすめ

大阪を舞台にしたホラー小説が読みたい人

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「こうして誰もいなくなった」 有栖川有栖

一口でミステリーと言ってもそこには様々なジャンルがあり、人それぞれ好みが分かれます。刑事が地道な捜査で真相を暴くモダンなものが好きな人がいれば、時刻表トリックが駆使されたトラベルミステリーが好みだという人、殺人鬼が暴れ回るホラー寄りの作品に目がないという人もいるでしょう。私はといえば基本的にどんなジャンルも好きなのですが、一番心惹かれるのは吹雪の山荘や絶海の孤島を舞台にしたクローズド・サークル作品です。

この手のジャンルで最も有名なのは、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』ではないでしょうか。陸地から遠く離れた孤島、どことなく不気味な童謡、その歌詞通りに殺されていく招待客たち・・・この設定を見ただけでワクワクしてきます。超有名小説なので影響を受けた作品もたくさんあるのですが、今回はその中の一つを取り上げたいと思います。有栖川有栖さん『こうして誰もいなくなった』です。

 

こんな人におすすめ

ホラー、ミステリー、ファンタジーなど、バラエティ豊かな短編集が読みたい人

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