夏という季節は不思議です。エネルギッシュで活気に満ちている反面、終わりに近づくとどこか切なく、物悲しい。四季の中でも、過ぎゆくのが寂しいと感じる季節は夏くらいのものではないでしょうか。
こういう季節柄、夏を描いた小説は、ただ明るいだけではない、しんみりした空気を含むものが多い気がします。代表作を挙げると、成長物なら湯本香樹実さんの『夏の庭-The Friend』、ミステリなら道尾秀介さんの『向日葵の咲かない夏』、ファンタジーなら恒川光太郎さんの『夜市』といったところでしょうか。今回ご紹介する小説にも、悩みと苦しみ、そして光が込められた夏が登場します。角田光代さんの『ひそやかな楽園』です。
こんな人におすすめ
親子の在り方をテーマにした小説が読みたい人