短編小説の良いところはたくさんあります。その一つは<収録作品中、どの話から読んでも楽しめる>ということ。一ページ目から読む必要のある長編と違い、短編の場合、ぱらぱらとめくってピンときたエピソードから読む、あるいは、苦手な用語が出てきそうなエピソードは飛ばす、ということも可能です。短編小説が仕事等で移動中に読むのに向いているのは、こういう特性があるからかもしれません。

その一方、第一話から順番に読んでこそ面白さを発揮する短編小説というものも存在します。それがいわゆる<連作短編>で、独立していると思われたエピソードに実は繋がりがあり、最後にすべてが結びつくというパターンです。第一話、第二話・・・と、エピソードが進むごとに伏線が積み上げられていくので、中には、順番通りに読まないとエンディングの真意が理解できないものも少なくありません。綾辻行人さんの『フリークス』や成田名璃子さんの『東京すみっこごはん』はこのパターンでした。今回取り上げる作品も、第一話から順番に読んだ方が楽しめます。太田忠司さん『奇談蒐集家』です。

 

こんな人におすすめ

ミステリアスな安楽椅子探偵ものが読みたい人

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