人がホテルに求めるものは一体何でしょう。楽しい旅のひと時を過ごすため、静かな空間でリフレッシュするため、落ち着いて仕事をするため・・・追手の目から隠れるため、などという理由もあるかもしれません。旅館と比べると、ホテルは従業員が客室内に出入りする機会が少なく、個人の空間が保たれるというのが特徴です。

静寂と賑わい、二つの要素が同時に並び立つホテルが、物語の舞台にならないはずありません。有名なのは、第一四九回直木賞を受賞した桜木柴乃さんの『ホテル・ローヤル』、木村拓哉さん主演で映画化された東野圭吾さんの『マスカレード・ホテル』辺りでしょうか。このブログでも取り上げた柴田よしきさんの『淑女の休日』、柚木麻子さんの『私にふさわしいホテル』も、ホテルに関わる人たちの悲喜こもごもを描いていました。でも、今回取り上げる作品に出てくるホテルは一味違いますよ。篠田真由美さん『ホテル・メランコリア』です。

 

こんな人におすすめ

幻想的なホラーミステリー短編集が読みたい人

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