ミステリーの探偵役は、とにもかくにも個性的でインパクト抜群なタイプが多いです。シャーロック・ホームズや金田一耕助は言うに及ばず、坂木司さん『ひきこもり探偵シリーズ』の鳥井は精神的負荷がかかると幼児返りする引きこもりで、東川篤弥さん『謎解きはディナーのあとでシリーズ』の影山は毒舌執事。赤川次郎さん『三毛猫ホームズシリーズ』にいたっては、謎解きの中心となるのがなんと猫です。現実では到底出会えないようなキャラクターが生き生き事件解決しているのを見るのは楽しいですね。
その一方、個性や人間味の描写がないからこそ輝くタイプのキャラクターもいます。例えば、当ブログでも何度か取り上げた西澤保彦さん『腕貫探偵シリーズ』の<腕貫男>。腕貫を付けた地味な容姿の市役所職員で、シリーズ通して内面描写はほぼないにも関わらず、その脂っけのなさが逆に印象的なんです。それから、この作品の主人公も、人間味を見せない所にある種の魅力を感じました。米澤穂信さんの『可燃物』です。
こんな人におすすめ
正当派警察ミステリー短編集が読みたい人