はいくる

「絶望ノート」 歌野晶午

私は文章を書くのが好きということもあり、子どもの頃から日記を書いています。昔は日記帳に、今はパソコンを使って、一日の出来事を書き留めておきます。嫌なことや悲しいことがあっても、文字にしてしまうと、不思議とすっきりするんですよ。翌日マラソン大会がある日などは、「雨が降りますように」などと、神頼みしつつ書いたものです。

でも、そんな他愛ない願い事が、本当に叶ってしまったらどうでしょうか。しかもそれが、人を傷つけるような願い事だったら?というわけで、今日はご紹介するのはこれ、新本格第一世代の一人として名高い歌野晶午さん「絶望ノート」です。

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神様、どうかあいつらを殺してください・・・・・中学生の少年が、いじめに苦しむ日々を綴った「絶望ノート」。ある日、少年は拾ってきた石を「神様」と信じるようになり、いじめっ子たちへの復讐を願う。そして相次ぐ事故や不審死。果たしてそれは、少年の願いを聞き届けた「神様」の仕業なのか。「絶望ノート」に隠された、驚愕の真実とは。

 

あらすじだけ読むと、なんだか「DEATH NOTE」を思い起こさせる本作。とはいえ、出てくるのは天才犯罪者でもなければ世界的な名探偵でもなく、小柄で気弱な男子中学生です。唯一目立つ点といえば、父親の趣味で付けられた照音(ショーン)という名前くらい。大人しい彼にとって、その日本人離れした名前はコンプレックスでしかありません。この辺りの描写は、昨今のきらきらネーム問題を連想させるものがありますね。

 

前半は物語は特に動かず、照音が「絶望ノート」に綴るいじめの記述がただひらすら続きます。この描き方がもう嫌になるくらいリアル。照音は国語が得意という設定があるのですが、なまじ文章力がある分、延々と続く惨いいじめ日記に心底憂鬱な気分にさせられました。何が嫌って、いじめっ子たちはもちろん、面白半分で同調するクラスメイトや、事なかれ主義を貫く教師の姿が嫌で嫌で。いじめを受けた経験のある方は、読むのが辛いと感じるかもしれません。

 

やがて照音が願った通りにいじめっ子たちが被害を受け始め、物語は一気にサスペンスホラーの色合いを帯びてきます。もちろん、そこはやっぱり歌野晶午。ラストではしっかり伏線を回収し、ミステリーとしてのオチをつけてくれます。推理小説にはそれなりに慣れた私ですが、このどんでん返しには「おおっ」と唸らされました。

 

「絶望」という文字の入ったタイトルからも分かる通り、後味の良さを期待してはいけません。気分が滅入っている時に読めば、本気でげんなりする可能性さえあります。ただし、この後味の悪さが歌野作品の魅力であることもまた事実。ここは一つ腹を括り、著者独特のイヤミスワールドを堪能してみてはいかがでしょうか。

 

タイトル通り救いがない度★★★★☆

中学生の世界って怖い度★★★★★

 

こんな人におすすめ

・意外性の高いイヤミスが読みたい人

・後味悪い小説を読んでもちゃんと復活できる人

 

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