ミステリー

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「夏をなくした少年たち」 生馬直樹

小説でもドラマでも映画でも「こういうの大好き!」というシチュエーションってあると思います。たとえば「住む世界の違う二人が偶然出会って恋に落ちる」とか「突如襲来したモンスターに名もなき一般市民が立ち向かう」とか。設定が好みだと、物語の面白さがグンと増しますよね。

私の場合、「子ども時代の出来事を大人になって振り返る」というシチュエーションが大好きです。映画化もされた『スタンド・バイ・ミー』のように、ノスタルジックな雰囲気が好きなんですよ。さらにイヤミス好きとしては、そこに謎解き要素が加われば言うことありません。そんな私の欲求を満たす一冊を見つけました。二〇一六年に第三回新潮ミステリー大賞を受賞した生馬直樹さん『夏をなくした少年たち』です。

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「青光の街(ブルーライト・タウン)」 柴田よしき

イギリスの女流作家、P・D・ジェイムズの著作に『女には向かない職業』という推理小説があります。この職業というのは「探偵」のこと。知力だけではなく、体力や筋力が求められることも多いであろう探偵稼業は、「女性には向かない」と思われがちだったのかもしれません。

とはいえ、そんな考え方があったのはもう昔の話。今や現実世界でもフィクションの中でも優秀な女探偵は数えきれないほど存在しますし、『女には向かない職業』の主人公も女性です。最近、魅力的な女探偵が登場する小説を読んだので紹介します。柴田よしきさん『青光の街(ブルーライト・タウン)』です。

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「銀河に口笛」 朱川湊人

「宇宙人」と聞くと、どんな存在を思い浮かべるでしょうか。いわゆる「グレイタイプ」と呼ばれる大きな頭と黒い目を持つタイプから、映画『エイリアン』に登場するような化け物じみた姿、地球人そっくりの容姿を持つものなど、色々でしょうね。ちなみに私はというと、子どもの頃に見たアニメの影響で、足がたくさんあるタコ型宇宙人を想像してしまいます。

いるのかいないのか、その存在が今なお議論の的になっている宇宙人。フィクションの世界ではしばしば恐怖の対象となることもありますが、実際のところはどうなんでしょう。科学的なことはともかく、こんな宇宙人が本当にいたら、友達になりたくなるかもしれません。朱川湊人さん『銀河に口笛』です。

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「赤いべべ着せよ・・・」 今邑彩

ミステリーの世界には「童謡殺人」という言葉があります。その名の通り、童謡の歌詞やメロディをキーワードとして殺人が行われるもののことですね。ミステリー小説としては世界で一、二を争うくらい有名なアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』、横溝正史の『悪魔の手毬歌』など、例として挙げられる作品はたくさんあります。

あまりにたくさんありすぎて、どれから紹介していいか迷う「童謡殺人」。今回は、狂気に駆られていく人間の醜態が印象的な作品を取り上げたいと思います。今邑彩さんの初期の名作『赤いべべ着せよ・・・』です。

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「サイレンス」 秋吉理香子

里帰り。この言葉を聞いて、どんなイメージが思い浮かぶでしょうか。久しぶりに会う家族との和気藹藹としたひと時?離れていた土地で過ごす気づまりな時間?私は今、生まれ育った地方で暮らしていますが、一時は遠方の地で働いていたことがあります。たまの休みに里帰りし、家族や幼馴染と過ごす時間は楽しいものでした。

考えてみれば、里帰りを心から楽しいと思えるのは幸せなことですよね。重苦しい気持ちを抱え、嫌々ながら帰郷するケースだってたくさんあると思います。ただ単に嫌なだけならまだしも、中には故郷で思いがけない恐怖が待ち受けていることだってあるのかも・・・・・今回取り上げるのは、そんな里帰りを扱った作品、秋吉理香子さん『サイレンス』です。

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「完全無欠の名探偵」 西澤保彦

ミステリーの世界には様々な探偵が登場します。シャーロック・ホームズに代表される私立探偵や、十津川警部のように警察官が探偵役をつとめるもの、ジャーナリストに学者、弁護士に医者。中にはアルセーヌ・ルパンのように、世間一般で言う犯罪者が謎解きを行う作品まであります。

そんな様々な探偵の中に「安楽椅子探偵」と呼ばれる存在がいます。犯罪現場に出向くことなく推理を行う探偵のことで、アガサ・クリスティの『ミス・マープル』シリーズなどが有名ですね。もちろん、その他にも魅力的な安楽椅子探偵はたくさんいるのですが、今日はその中でも異色の存在が登場する作品をご紹介しましょう。西澤保彦さん『完全無欠の名探偵』です。

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「淑女の休日」 柴田よしき

両親が旅行好きだということもあって、子どもの頃から旅をする機会は比較的多い方だったと思います。名所を巡ったり、お土産を買ったりすることももちろん楽しいのですが、同じくらい楽しみなのは、どんなホテルに泊まるかということ。家とは違うベッドやバスルーム、広々としたレストランの朝食ビュッフェなど、ワクワクして仕方ありませんでした。

大勢の人間が出入りし、様々なドラマが展開する場所ということもあって、ホテルを舞台にした創作作品も多いですね。一言でホテルと言っても、観光地にあるリゾートホテルからサラリーマンが素泊まりするビジネスホテル、カップルが利用するラブホテルなど色々な種類がありますが、今日取り上げるのは都会に建つシティホテルが舞台の作品。柴田よしきさん『淑女の休日』です。

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「乱反射」 貫井徳郎

「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざをご存知でしょうか。ウィキペディアによると「ある事象の発生により、一見すると全く関係がないと思われる場所・物事に影響が及ぶことの喩え」とあります。大ヒットしたアメリカ映画のタイトルでもある「バタフライ・エフェクト(バタフライ効果)」も同じような意味ですね。

ほんの些細な出来事が様々な事象の原因となり、やがて予想もつかないような大事件を引き起こしてしまう。そんなことが現実に起こったら・・・もしその原因の一つが自分だったら・・・そんな想像をすると、なんだか背筋が寒くなります。そんな恐ろしい「もしも」を描いた作品がありますよ。貫井徳郎さん『乱反射』です。

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「出口のない部屋」 岸田るり子

密室。ミステリー好きなら、まず間違いなく一度は目にしたことのあるキーワードでしょう。閉ざされた部屋、出入り不可能な状況、その中で起こる謎めいた事件。江戸川乱歩の『D坂の殺人事件』をはじめ、密室を扱った推理小説はたくさんあります。

とはいえ、たくさんありすぎて、ちょっとやそっとの密室ものではもはや読者が驚かなくなったことも事実。現実にはなかなか実現困難なケースが多いこともあって、一歩間違うと批判・冷笑の対象にもなりかねません。そこで今回は、一風変わった密室が登場する小説をご紹介します。岸田るり子さん『出口のない部屋』です。

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「さよなら神様」 麻耶雄嵩

「苦しい時の神頼み」「触らぬ神に祟りなし」「捨てる神あれば拾う神あり」ぱっと思いつくだけで、神様にまつわることわざはたくさんあります。日本は八百万の神様が存在する国。身近なところに神様がいるのは、何も故事成語に限った話ではありません。

もしすぐ近くに神様がいて救いの手を差し伸べてくれたら・・・?そんな空想をしたことがある人って結構多いのではないでしょうか。でも、少なくともミステリーの世界においては、神様がさっさと犯人を見破ってしまうと物語が成立しませんよね。ですが、そんな「反則技」とも言える手に挑戦した作品があるんです。破天荒で癖のある作風ながら、その独特の世界観が根強い支持を得る麻耶雄嵩さん『さよなら神様』です。

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