ヒューマン

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「ぐるぐる猿と歌う鳥」 加納朋子

「ごあいさつ」欄にも書いてある通り、私は九州出身で、人生の大半を九州で過ごしてきました。海もあれば山もあり、ラーメンと明太子以外にも美味しい食べ物が色々あり、よその土地への移動もしやすい。身びいきかもしれませんが、いいところがたくさんある土地ですよ。

自分の故郷だからということもあるでしょうが、九州を舞台にした作品を見かけると、ついつい手が伸びてしまいます。重厚な歴史もの、どろどろしたイヤミス、胸がきゅんとするようなラブストーリーなど様々な作品がありますが、ハートウォーミングな成長物語が読みたい時はこれ。加納朋子さん『ぐるぐる猿と歌う鳥』がおすすめです。

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「風味さんのカメラ日和」 柴田よしき

写真撮影は好きですか。私自身は撮る方は決して上手ではありませんが、見るのは大好き。インターネットで美味しそうなスイーツの写真を見つけては、一人ニンマリしていることもしばしばです。

今はスマートフォンなどの普及により、一昔前よりずっと手軽に写真が撮れるようになりました。それはもちろん楽しいことだけれど、時にはしっかりとカメラを構えて写真撮影するのも面白いかもしれません。今日取り上げるのは、柴田よしきさん『風味さんのカメラ日和』。最近忘れていた、「レンズを通して物を見ることの楽しさ」を思い出せた気がします。

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「娘と嫁と孫とわたし」 藤堂志津子

女性同士の人間関係は難しい。これ、色々なところでよく使われる言い回しです。女の立場から言わせてもらうと、男性同士の人間関係もけっこう難しいと思うんですが・・・とはいえ、同性ばかりが集まると、異性が混じっている時とは違う軋轢やしがらみが生じることは事実でしょう。

私はイヤミスが大好きなので、女性同士のドロドロを扱った作品はたくさん読みました。ですが、さすがに小説やドラマになるような争いなど、そうそう起こらないもの(と思いたい)。女性のリアルな駆け引きを描いた作品といえば、これなんてお勧めですよ。直木賞をはじめ数多くの文学賞を受賞し、エッセイストとしても有名な藤堂志津子さん『娘と嫁と孫とわたし』です。

 

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「獏の耳たぶ」 芦沢央

小説を面白いものにするためには、もちろん内容が大事です。ですが、それと同じくらい、タイトルが魅力的であることも大事だと思います。書店や図書館で本棚の前を歩き、タイトルに惹かれて本を手に取ることもあるでしょう。実際、内容を知らないにも関わらず、「タイトルが面白そう」という理由で読んだ本もかなりあります。

海外作品であればダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』やアガサ・クリスティ―の『そして誰もいなくなった』、日本の作品なら恩田陸『麦の海に沈む果実』や東野圭吾『むかし僕が死んだ家』などなど、タイトルが魅力的であるだけでなく、そこに込められた意味も味わい深いんですよ。ここ最近読んだ小説の中で、タイトルの意味に唸ってしまった作品はこれ。芦沢央さん『獏の耳たぶ』です。

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「嫁をやめる日」 垣谷美雨

寡婦、後家、未亡人。いずれも夫を亡くし、再婚していない女性を指す言葉です。日本ではこれらの女性を支援するため、税金などで優遇措置が設けられています。

その一方、一人身になった女性が直面する問題もたくさんあります。そんなの昔の話?本当にそうでしょうか。夫と死に別れた女性を待ち受ける困難とはどんなものなのか。今日は、その一例を描いた作品を紹介します。垣谷美雨さん『嫁をやめる日』です。

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「BUTTER」 柚木麻子

バターたっぷりの料理は美味しいです。最近はバターを使わず、カロリーカットした

レシピが多いようですが、それだと時々物足りなくなりませんか?どちらかと言えばあっさり系の味が好きな私でさえ、たまにはバターをふんだんに使ったパスタやお菓子が食べたくなります。

とはいえ、バターの使い過ぎにはご用心。あまりに濃厚すぎる味わいの虜となり、後々後悔する羽目になったりして・・・そんな運命に陥った女性を描いた作品がこちら。柚木麻子さん『BUTTER』です。

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「ガーディアン」 薬丸岳

いじめ、体罰、スクールカースト、試験勉強etc。学校には様々な問題が山積みです。私自身、特に中学校では、人間関係のいざこざで苦労した記憶があります。誰かがこの問題を解決し、穏やかな学校生活を送らせてくれないものかと、他力本願なことを考えたりもしました。

もしも本当にそんな存在がいたとしたら、学校はより良い場所になるのでしょうか。そんな「もしも」を描いた作品を読みました。薬丸岳さん『ガーディアン』です。

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「慈雨」 柚月裕子

「お遍路」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。弘法大師の足跡を辿って四国八十八カ所を巡ることで、功徳を積むために行われます。一昔前は徒歩で巡るしか移動手段がありませんでしたが、今は車やバスツアーでの移動もあるようですね。

お遍路に関する小説は色々ありますが、私が真っ先に思い浮かべるのは松本清張の『砂の器』。故郷を追われた親子が遍路する姿が印象的でした。この場面の印象があまりに強いからか、私はお遍路という言葉を聞くと、暗く悲しいものを連想してしまいます。ですが、最近読んだ小説の影響で、少し印象が変わってきました。柚月裕子さん『慈雨』です。

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「クローバーナイト」 辻村深月

家庭の在り方は千差万別。共働き世帯もあれば、片方が働いて片方が専業主婦(夫)という家もあり、母子家庭や父子家庭だってあります。そして、家庭の数だけ喜びがあると同時に、悩みや悲しみも生まれます。

当ブログでも、家族にまつわる小説をいくつか紹介してきました。たくさんの作家さんに取り上げられるということは、それだけ「家庭」というテーマが興味深いものだからなのでしょう。最近、こんな家族に関する小説を読みました。辻村深月さん『クローバーナイト』です。

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「雨利終活写真館」 芦沢央

数年前から「終活」という言葉をよく見聞きするようになりました。文字通り「人生の終わりのための活動」のことで、葬儀や財産分与に関する準備をしておいたり、身の回りのものを片付けておいたりするようですね。少子高齢化が進む現代社会においては、とても重要な意味を持つ活動だと思います。

終活をテーマにしたフィクション作品といえば、ジャック・ニコルソンとモーガンフリーマンが出演した『最高の人生の見つけ方』、アカデミー賞で外国語映画賞を受賞した『おくりびと』、伊丹十三の監督デビュー作である『お葬式』など、映画が多い気がします。小説ではないのかな・・・と思っていたら、面白いものを見つけました。芦沢央さん『雨利終活写真館』です。

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