はいくる

「七月に流れる花」 恩田陸

我が家の近所にある図書館は、児童書コーナーがなかなか充実しています。子ども向けの小説や図鑑、伝記など、様々なジャンルの本が揃っていますし、乳幼児向けの絵本のラインナップも豊富。私もよくうろついていますが、面白そうな本が多すぎてどれを借りようか悩むほどです。

「子ども向け」と銘打っておきながら、大人が読んでも面白い作品はたくさんありますよね。今回ご紹介するのは、講談社が児童書として発行した書籍レーベル「講談社ミステリーランド」の中の一冊です。恩田陸さん『七月に流れる花』です。

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母親とともに夏流(かなし)という町に引っ越してきた少女・ミチル。中途半端な時期の転校のため親しい友達もできず、退屈な日々を送るミチルのもとに、古城での林間学校の招待状が届く。城にはミチルの他に五人の少女が招かれていた。選ばれた少女達だけで過ごす夏休み、城内で施行される奇妙なルールと正体不明の「みどりおとこ」、そして一人の少女が消えた・・・・・自分が林間学校に呼ばれた理由が分からず困惑するミチルが、城で知った哀しい真実とは。

 

こういう「閉ざされた空間での少年少女」は、恩田陸さんの十八番。本作において、主人公のミチルは理由も分からないまま古城での林間学校に参加させられることになります。勝手に外に出ることは許されず、「鐘が三度鳴ったら城内にあるお地蔵様をお参りする」「水路に流れる花の色と数を報告する」などの奇妙なルールがあり、おまけに全身緑色という謎めいた「みどりおとこ」まで出没する・・・そんな中で、林間学校に参加していた少女の一人が急に姿を消し、ミチルは次第に恐怖心を抱くようになります。

 

この時のミチルの切迫した心境がものすごくリアル。この林間学校は一体何なのか、「みどりおとこ」は何者なのか、消えた少女はどこへ行ったのか、まさか次は自分が消されてしまうのでは。閉所恐怖症気味の私は、古城に閉じ込められて疑心暗鬼に陥っていくミチルに感情移入しまくりでした。

 

おまけに本作は、思い切り幻想的な雰囲気で盛り上げつつ、しっかり現実的な謎解きが用意されています。恩田陸さんと言えば、はっきりした解答を出さないタイプの作品が多いので、これは嬉しい驚きでしたね。少女たちが集められた理由と風変わりなルールの意味、そして「みどりおとこ」の正体・・・真実はあまりに切なく哀しいものであり、少女たちの今後の幸せを願わずにはいられません。

 

なお、この物語は同時に配本された『八月は冷たい城』と対になっています。こちらは、ミチルたちと土塀を挟んで林間学校生活を送る少年たちの話です。作中で残された伏線はこちらで回収されることになるので、ぜひ併せて読むことをお薦めします。このブログでも、近日中に感想をアップする予定です。

 

夏の情景描写が美しい!度★★★★☆

どうか彼女たちが乗り越えてくれますように・・・度★★★★☆

 

こんな人におすすめ

瑞々しいジュブナイル小説が読みたい人

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