はいくる

「錆びた太陽」 恩田陸

SF小説には、しばしばロボットが登場します。作品によって善玉だったり悪役だったりするロボット。人工知能の研究が進み、Pepperのような存在も珍しくなくなった今、ロボットは一般市民にも手の届く存在です。

ロボットが出てくる小説というと、私が真っ先に思い浮かべるのは星新一さんの短編『ボッコちゃん』です。初めて読んだ時、頭からっぽの美人ロボットが巻き起こす騒動にゾッとさせられました。同じロボットでも、今回紹介する作品に登場するロボットはちょっと違いますよ。恩田陸さん『錆びた太陽』です。

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原発事故により国土が汚染され、多くの人命が失われた日本。汚染地域ではなぜか犠牲者たちがゾンビ化して徘徊するようになり、七体のロボットがパトロールを行っていた。そこにある日、国税庁職員の女性が現れる。底抜けに明るい態度でロボットたちを翻弄する彼女の目的は何なのか。立ち入り禁止区域内で一体何が起こっているのか。人間の命令に逆らうことのできないロボットたちが目にした真実とは・・・・・

 

作品中にちりばめられた小ネタが面白い!ロボットたちの名前は有名刑事ドラマの登場人物にちなんで「ゴリ」「ジーパン」などですし、研究のために飼われているネズミの名前は「アルジャーノン」、パトロール用の車の名前は「サンダーバード」。その他、懐かしいネタの目白押しで、読んでいて何度も噴き出しそうになりました。

 

また、ロボットたちを振り回す国税庁職員・徳子もなかなか強烈です。何しろこの女性、職務を全うするためにゾンビからさえアンケートを取ろうとした挙げ句、襲ってくるゾンビに向けて「マイナンバー持ってますか?」と聞くのですから・・・拳銃持ってゾンビと戦うミラ・ジョヴォヴィッチも真っ青の豪胆っぷり。前述の昭和ネタがピンと来なかった読者も、徳子のキャラには笑ってしまうと思います。

 

とはいえ、本作は決して現実離れしたトンデモSFではありません。そもそも騒動の発端は、現実世界でも議論の的になる原発です。さらにそこにキナ臭い政府の思惑も絡んできて、物語は段々と不穏な方向に向かい始めます。ネタバレになるので詳細は省きますが、ロボットの言う「人間を信じ切るにはあまりにも彼らは前科がありすぎる」という言葉が胸に突き刺さりました。

 

正直なところ、本作は直木賞受賞作『蜜蜂と遠雷』のような作品を期待して読むと「???」となってしまうかもしれません。良くも悪くも恩田陸節が炸裂していて、作者のファンでなければ消化不良に感じてしまう可能性が高いです。ですが、恩田陸さんの独特の作風が好きなら、きっと楽しめると思います。私?もちろん、楽しめましたよ!

 

これは完全なファンタジー度★☆☆☆☆

ロボットたちがコミカルで素敵!度★★★★☆

 

こんな人におすすめ

近未来を舞台にしたSF小説が読みたい人

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