はいくる

「PTAグランパ!」 中澤日菜子

少子高齢化が叫ばれるこのご時世、子育てをテーマにした作品は数えきれないくらいありますし、このブログでも何冊か紹介しました。父親が、母親が、あるいはその両方が、子どもと向き合い悪戦苦闘しつつ前進していく物語は、いつの世も人の心を惹きつけます。

そして、子育てに関わるのは、何も親だけに限った話ではありません。今日取り上げるのは、不器用ながらも子どものため奮闘するお祖父ちゃんを描いた作品です。劇作家としても活動する、中澤日菜子さん「PTAグランパ!」です。

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大企業を定年退職し、妻とともに隠居生活を送る主人公・武曾勤。そんな彼のもとに、離婚した娘が孫を連れて転がり込んでくる。商社で忙しく働く娘に代わり、なりゆきで小学校PTAの副会長を引き受ける羽目になった武曾だが、そこには想像もつかないような世界が待っていた。やけに回数の多い会議、子ども同伴での居酒屋利用、我が子の罪を認めないモンスターペアレント、信頼していた教師の逮捕・・・・・次から次へと巻き起こる騒動と戦う武曾の運命や如何に。

 

子育て問題を取り上げた作品で欠かせないキーワード・PTA。そこに挑むのが、バリバリの企業戦士だったお祖父ちゃんという設定がまず面白いですね。またこのお祖父ちゃんが、悪い人ではないけれど頑固で昔気質、「雑用は女の子の仕事」と言って手伝う素振りも見せず、母親なら子ども最優先で当然という態度で要らぬ騒動を引き起こします。この辺り、「正義感が強い主人公がPTAの悪習を正す」といった定番パターンとは違って、どうなることかとハラハラしてしまいました。

 

主人公・武曾以外にも、個性豊かな登場人物がたくさん登場します。前年度会長であるママ軍団のボス、PTA会長を務める金髪ロン毛のフリーター男、武曾と同じ副会長にして子ども三人を育てるパート主婦、ひょんなことから再会した武曾の元同僚etcetc。彼ら全員にそれぞれの立場があり、守るべき家族がいます。何かと武曾と対立する母親グループのボスにしてもそれは同じで、敵味方を単純に分けるのではなく、各々に意見があるということをしっかり描いている点が好印象でした。

 

さらに、本作では非正規従業員と正社員で働く女性間の溝についても描かれています。正社員として働く女性が、パート勤務の主婦に対し「納税もろくにしていない」と言い放つ一方、パート主婦は正社員の母親を「仕事より子どものことを考えてあげるべき」と非難する。この描写にとても臨場感があり、一つ一つの台詞が胸にぐさぐさと突き刺さるようでした。だからこそ、二つの立場の女性が折り合いをつけ、和解するシーンは一読の価値ありです。

 

とにかくPTAあるあるネタに満ち溢れた本作。序盤など、あまりに強烈すぎてPTA役員をするのが怖くなりそうですが、ちゃんと希望も光も用意されています。視野を広げ、一歩ずつ前進していくお祖父ちゃんの成長ぶりを、ぜひご自分の目で確かめてみてください。

 

おじいちゃんが頑張る度★★★★☆

ボスママにだって言い分はある度★★★★☆

 

こんな人におすすめ

・お年寄りの奮闘記が好きな人

・PTAの内幕に興味がある人

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コメント

  1. しんくん より:

    先ほど読んだ「秋山善吉工務店」のような出だしですが、PTAまで出てくるとはかなりそちらの事情が深く描いてありそうです。
    妻もPTAは無駄な行事が多く何の為のPTAかとよく言っていました。
    正社員とパート、また専業主婦との意識の差もリアルで共感出来そうです。

    1. ライオンまる より:

      秋山善吉さんが「かくありたい」と思えるような筋の通ったおじいちゃんだったのに対し、こちらの主人公は至らない部分が結構あります。
      そういう欠点をどう認め、どう乗り越えていくかが、この作品の面白いところですね。
      PTAについて色々考えることが多い方なら、読み応えがより増すのではないでしょうか。

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