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「怪談のテープ起こし」 三津田信三

「実話系ホラー」というジャンルがあります。その名の通り、「実際の出来事であるかのような体裁のホラー」のことで、貞子やジェイソンのような目に見える化け物が登場することはほとんどない代わり、日常をじわじわと浸食するかのような恐怖感があります。最近では、映画化もされた小野不由美さんの「残穢」などがありましたね。

実話系ホラーの場合、リアリティはある反面、一歩間違えるとヤマもなければオチもなく、怖くも何ともない話になってしまうことが特徴です。ですが、今日ご紹介する作品に関しては、そういう心配は無用ではないでしょうか。実話系ホラーを書かせたら国内随一(と私が勝手に思っている)の三津田信三さん「怪談のテープ起こし」です。

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「スタフ staph」 道尾秀介

「覆水盆に返らず」という言葉があります。「一度起きてしまったことは決して元に戻せないこと」の喩えで、日常生活でもよく使われることわざですね。私自身、取り返しのつかない失敗をしでかし、にっちもさっちもいかなくなって頭を抱えることがよくあります(汗)

やり直し、取り返しのきく物事がたくさんある反面、二度と元には戻せない物事があるということもまた事実。それが、今日ご紹介する本のテーマです。直木賞作家である道尾秀介さん「スタフ staph」です。

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「私が失敗した理由は」 真梨幸子

成功譚って面白いですよね。困難に負けず、逆境を跳ね除け、幸福への階段を上り詰めていくサクセスストーリーは、いつの世も人の心を惹きつけます。「サウンド・オブ・ミュージック」や「プリティ・ウーマン」が不朽の名作とされるのも、その辺りに理由があるのではないでしょうか。

では、失敗にまつわる物語はどうでしょう。登場人物はいかにして道を誤り、不幸になっていったのか。それだって、なかなか興味深いテーマだと思いませんか?というわけで、今日はこれです。イヤミス界の代表的作家として名高い真梨幸子さん「私が失敗した理由は」です。

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「ラストナイト」 薬丸岳

犯罪を扱った物語を読む時、一番興味を持つ点はどこでしょうか。犯人の意外な正体?複雑怪奇なトリック?私の場合、それは「動機」です。登場人物たちはなぜ罪を犯し、犯罪者になったのか。その理由に惹かれてやみません。

金や復讐、痴情のもつれなど、一目見れば分かるような理由で犯行に走る者がいる一方、どうにも不可解な理由で罪を犯す者もいます。というわけで、今日はこの作品をご紹介しましょう。犯罪をテーマにした小説を数多く手がける薬丸岳さん「ラストナイト」です。

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「聖母」 秋吉理香子

「母親の愛」は、しばしば「無償の愛」「海より深い」といった表現をされます。見返りを求めず、自分の命すら顧みず、ただひたすらに我が子を想う。それは確かに愛情以外の何ものでもないでしょう。

でも、くれぐれもご用心。美しく崇高であるはずの母の愛が、時に暴走し、狂気へと変わっていくこともあるのです。今日ご紹介するのは、アニメや映画の制作活動でも活躍する、秋吉理香子さん「聖母」です。

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「奥様はクレイジーフルーツ」 柚木麻子

夫婦関係を続けるに当たって、一番大事なものって何でしょうか。恋愛感情?信頼関係?経済力?聞く人ごとに、違った答えが出てきそうです。

そして、夫婦生活を考える上で切っても切り離せないのが、ズバリ、セックス問題。もし、夫婦間で性生活がなくなってしまったら?答えの出ないセックスレス問題について描いているのが、柚木麻子さん「奥様はクレイジーフルーツ」です。

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「鬼畜の家」 深木章子

登場人物の証言形式で構成された話、大好きです。有名なところでは、湊かなえさんの「告白」や宮部みゆきさんの「理由」、このブログでも紹介した貫井徳郎さんの「愚行録」などがありますね。語り手が変わるごとに二転三転する展開に、ついついのめり込んでしまいます。

小説の世界において、このように語り手によって読者をミスリードする手法のことを「信頼できない語り手」といいます。今日は、私がお気に入りの「信頼できない語り手」作品をご紹介しましょう。六十歳まで弁護士として活躍、リタイア後に作家デビューを果たした深木章子さん「鬼畜の家」です。

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「結婚詐欺師」 乃南アサ

保険金詐欺に催眠商法、振り込め詐欺に寸借詐欺・・・この世には、たくさんの詐欺が存在します。人を騙して金品を奪い、損害を与える憎むべき犯罪行為です。そして、どれだけ世が移り変わろうと、決してなくならない犯罪でもあります。

一体なぜ人は詐欺師に騙されるのか。詐欺師はいかにして人の心を欺くのか。今日は、結婚詐欺について取り上げられた本を紹介しようと思います。直木賞受賞作家、乃南アサさん「結婚詐欺師」 です。

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「悪母」 春口裕子

親業って大変ですよね。何しろ子育ては仕事と違い、定時もなければ定休日もなし。必要とあらば二十四時間年中無休で子どもと向き合う、それが親の役目です。そんなハードな毎日を乗り切るため、家族はもちろんのこと、同じような境遇のママ友と支え合い励まし合う人も多いでしょう。

ですが、そのママ友は本当に信頼できる相手でしょうか?自分だけではなく子どもも交えて付き合うママ友と、もしトラブルを起こしてしまったら?今日ご紹介するのは、ママ友付き合いの闇を描いたサスペンス、春口裕子さん「悪母」です。

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「匿名交叉」 降田天

インターネットって便利で面白いですよね。その場を動かず世界中の情報を知ることができるし、別世界に生きる人達と友達になることができる。私がこうして本について語ることができるのも、インターネットがあるからこそです。

でも、当たり前の話ですが、インターネットには恐ろしい部分もたくさんあります。情報の発信者も受信者も姿が見えないため、その気になれば何の責任も負うことなく人を傷つけ、貶めることができるのです。インターネットの匿名性の恐怖を描いた作品と言えばこれ、漫画や映画のノベライズ作家としても実績のある、降田天さん「匿名交叉」です。

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