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「風味さんのカメラ日和」 柴田よしき

写真撮影は好きですか。私自身は撮る方は決して上手ではありませんが、見るのは大好き。インターネットで美味しそうなスイーツの写真を見つけては、一人ニンマリしていることもしばしばです。

今はスマートフォンなどの普及により、一昔前よりずっと手軽に写真が撮れるようになりました。それはもちろん楽しいことだけれど、時にはしっかりとカメラを構えて写真撮影するのも面白いかもしれません。今日取り上げるのは、柴田よしきさん『風味さんのカメラ日和』。最近忘れていた、「レンズを通して物を見ることの楽しさ」を思い出せた気がします。

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「娘と嫁と孫とわたし」 藤堂志津子

女性同士の人間関係は難しい。これ、色々なところでよく使われる言い回しです。女の立場から言わせてもらうと、男性同士の人間関係もけっこう難しいと思うんですが・・・とはいえ、同性ばかりが集まると、異性が混じっている時とは違う軋轢やしがらみが生じることは事実でしょう。

私はイヤミスが大好きなので、女性同士のドロドロを扱った作品はたくさん読みました。ですが、さすがに小説やドラマになるような争いなど、そうそう起こらないもの(と思いたい)。女性のリアルな駆け引きを描いた作品といえば、これなんてお勧めですよ。直木賞をはじめ数多くの文学賞を受賞し、エッセイストとしても有名な藤堂志津子さん『娘と嫁と孫とわたし』です。

 

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「カウントダウン」 真梨幸子

ある日突然、病気で余命宣告されたら。そんな状況に直面した時、人はどういう行動を取るのでしょうか。愛する人とたくさん思い出を作る?やり残した大仕事を片付ける?百人に聞けば百通りの答えが返ってくると思います。

悔いなく最期の瞬間を迎えるための活動「終活」は、今や社会現象となりつつあります。終活を通じて心の整理を行い、限りある人生を豊かに送る人もいるでしょう。反面、終活を行うことで、忘れたい過去を掘り返すことになったりして・・・そんな「黒い終活」を描いた作品がこれ。真梨幸子さん『カウントダウン』です。

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「ししりばの家」 澤村伊智

「家」という言葉には、様々なイメージが付きまといます。ほのぼのと温かく、住人を守ってくれるイメージを持つ人もいるでしょう。と同時に、牢屋のように閉鎖的で、人を捕えるイメージだってあると思います。

前者の場合はラブストーリーやヒューマンドラマ、後者の場合はサスペンスやホラーの舞台となる「家」。「家」がキーワードとなるホラー小説といえば、貴志祐介さんの『黒い家』や小野不由美さんの『残穢』が有名です。ですが、この作品に登場する家も、それらに負けず劣らず恐ろしいですよ。澤村伊智さん『ししりばの家』です。

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「ずうのめ人形」 澤村伊智

子どもの頃、人形遊びが好きでした。私の子ども時代に主流だったのはタカラトミーから発売された「ジェニーちゃん」。細かなキャラクター設定やお洒落な洋服の数々に夢中になったことを覚えています。

その名前の通り人の形をしているだけあって、人間と人形の間には強い繋がりがあります。そのせいか、ホラー界では時として恐ろしいキーアイテムになることもありますね。最近読んだホラー小説にも、不気味な人形が登場しました。澤村伊智さん『ずうのめ人形』です。

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「獏の耳たぶ」 芦沢央

小説を面白いものにするためには、もちろん内容が大事です。ですが、それと同じくらい、タイトルが魅力的であることも大事だと思います。書店や図書館で本棚の前を歩き、タイトルに惹かれて本を手に取ることもあるでしょう。実際、内容を知らないにも関わらず、「タイトルが面白そう」という理由で読んだ本もかなりあります。

海外作品であればダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』やアガサ・クリスティ―の『そして誰もいなくなった』、日本の作品なら恩田陸『麦の海に沈む果実』や東野圭吾『むかし僕が死んだ家』などなど、タイトルが魅力的であるだけでなく、そこに込められた意味も味わい深いんですよ。ここ最近読んだ小説の中で、タイトルの意味に唸ってしまった作品はこれ。芦沢央さん『獏の耳たぶ』です。

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「合理的にあり得ない 上水流涼子の解明」 柚月裕子

私が面白いと思う作品には、名コンビが登場することが多いです。ホームズの横にはワトソン、ポアロの横にはヘイスティングズ。異なる長所を持つ二人が助け合い、自分の持ち味を活かして物事に臨む様子は、読んでいてわくわくさせられます。

最近は、パートナーが動物や悪魔など人外の存在だったり、主人公と仲が悪かったりするなど、ユニークなコンビが登場する作品もありますね。では、この作品に出てくる二人はどうでしょうか。柚月裕子さん『合理的にあり得ない 上水流涼子の解明』です。

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「錆びた太陽」 恩田陸

SF小説には、しばしばロボットが登場します。作品によって善玉だったり悪役だったりするロボット。人工知能の研究が進み、Pepperのような存在も珍しくなくなった今、ロボットは一般市民にも手の届く存在です。

ロボットが出てくる小説というと、私が真っ先に思い浮かべるのは星新一さんの短編『ボッコちゃん』です。初めて読んだ時、頭からっぽの美人ロボットが巻き起こす騒動にゾッとさせられました。同じロボットでも、今回紹介する作品に登場するロボットはちょっと違いますよ。恩田陸さん『錆びた太陽』です。

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「出会いなおし」 森絵都

人生は出会いと別れの繰り返しです。これは何も大きな出来事だけを指しているわけではありません。何気なく散歩している道にも、買い物しようと立ち寄ったコンビニにも、無数の出会いと別れが溢れています。

そして、一度別れた相手と思いがけない形でまた出会うこともあります。そんな意外な出会いを描いたのが、森絵都さん『出会いなおし』。出会いを繰り返すことの素敵さをしみじみ実感することができました。

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「秋山善吉工務店」 中山七里

「雷親父」という言葉は、今や死語になりつつあります。雷のように大声で怒鳴る、何かと口やかましい親父のことですが、今のご時世では迂闊に怒鳴り声を上げると一歩間違えれば警察沙汰。『サザエさん』に登場する波平さんのような雷親父は生きにくい社会なのでしょう。

ですが、私には雷親父が不要な存在だとは思えません。筋を通し、節度を重んじ、若者を教え導く気骨ある老人は、絶対に必要なのだと思います。今回取り上げるのは中山七里さん『秋山善吉工務店』。このおじいちゃん、かなり素敵ですよ。

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