はいくる

「おだやかな隣人」 赤川次郎

現代では隣近所との人間関係が希薄になり、コミュニケーションを取る機会も少なくなったと言われています。プライバシーの保護や防犯上の問題から、ある意味では仕方ないことなのかもしれません。ちなみに私はというと、ご近所さんと挨拶程度は行っても世間話を交わすことなど稀、名前を知らない相手も大勢います。

では、もし隣人が自分と共通点を多く持っていたらどうでしょう?その上、人好きのする、とても魅力的な相手だったら?普段はご近所付き合いなどしない人でも、親しくなりたいと思ってしまうのではないでしょうか。そして付き合う内、隣人の恐ろしい秘密を知ってしまうかも・・・今日ご紹介するのは、そんな謎めいた隣人を扱った作品です。日本人作家としては国内最多の著作発行部数を誇る、赤川次郎さん「おだやかな隣人」です。

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サラリーマンの夫と専業主婦の妻、小学生の娘という平凡な小川家の隣りに、ある日、三人家族が引っ越してくる。自分たちとまったく同じ家族構成、同じ年齢の宮沢家とたちまち親しくなる小川家の三人。生き生きしたご近所付き合いを楽しむ一家だが、やがて小川家の妻・友子は違和感を感じ始める。次第に似てくる両家の面々、奇妙な行動を取るようになった娘たち、周囲で起こる不審な死・・・・・仲良しの隣人には、果たして別の顔があるのか。やがて明らかになる戦慄の真相とは。

 

赤川次郎さんといえば「三毛猫ホームズ」「三姉妹探偵団」といったユーモア・ミステリのイメージが強い作家さんでしたが、この作品を機に、こういうホラー小説も書くのだと知りました。ホラーといっても、ジェイソンのような化け物がチェーンソーを振り回すわけでもなければ、宇宙からやって来たエイリアンが大殺戮を繰り広げるわけでもありません。得体の知れない存在が、日常をじわじわと浸食してくる・・・そんなモダンホラーの雰囲気をたっぷり味わうことができます。

 

本作で巧みだなと感じたのは、小川家と宮沢家が徐々に親しくなっていく描写。平々凡々な小川夫妻は、自分達と同い年で同じ家族構成、それでいて自分達より少し華やかな宮沢夫妻に憧れ、段々と彼らに追従する形になっていきます。ふとした瞬間、そのことに違和感を覚える妻・友子も、宮沢夫妻がさり気なく見せる気遣いや優しさにたちまち誤魔化され、なかなか思い切った行動を取ることができません。それに読者としてはもどかしさを感じるわけですが、実際のご近所トラブルも、こんな風にしてじわじわと起こるものなのかもしれませんね。

 

小川家で巻き起こる不気味な事件と並行して、本作ではもう一つ、飛び降り自殺を目撃してしまった若い女性の物語が描かれます。自殺した中年男性が、飛び降りる直前に告げた謎の言葉。これに引っかかりを覚えた女性は独自に調査を開始し、やがて宮沢家の存在に行きつくのですが・・・・・この二つの物語の収束の仕方もなかなか面白く、「ほほう」と唸ってしまいました。

 

あらすじから分かる通り本作はホラー小説であり、赤川次郎さんのユーモアあふれる作品が好きな方は避けてしまうかもしれません。ですが、ご安心を。著者独特の軽快な文章のおかげで、意外なくらいさくさく読めてしまいます。本自体のボリュームもさほどではないですし、よくできたホラードラマを楽しむような気持ちで読んでみてはいかがでしょうか。

 

隣りは何をする人ぞ・・・度★★★★☆

最後の一ページまで恐怖は続く度★★★★★

 

こんな人におすすめ

ホラー映画やドラマが好きな人

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