はいくる

「夏をなくした少年たち」 生馬直樹

小説でもドラマでも映画でも「こういうの大好き!」というシチュエーションってあると思います。たとえば「住む世界の違う二人が偶然出会って恋に落ちる」とか「突如襲来したモンスターに名もなき一般市民が立ち向かう」とか。設定が好みだと、物語の面白さがグンと増しますよね。

私の場合、「子ども時代の出来事を大人になって振り返る」というシチュエーションが大好きです。映画化もされた『スタンド・バイ・ミー』のように、ノスタルジックな雰囲気が好きなんですよ。さらにイヤミス好きとしては、そこに謎解き要素が加われば言うことありません。そんな私の欲求を満たす一冊を見つけました。二〇一六年に第三回新潮ミステリー大賞を受賞した生馬直樹さん『夏をなくした少年たち』です。

スポンサーリンク

才気煥発な啓、トラブルメーカーの雪丸、妹思いの国実、穏やかで優しい拓海・・・田舎町で代わり映えしない日々を送る四人の少年たち。そんな彼らの平凡な日常は、ある夏、国実の妹・智里の不審死という悲劇により終わりを告げる。智里の死にまつわる謎と、少年達が抱える秘密。風化しつつあったその事件は、二十数年後、一人の男の死により再び動き出す。時を経て明かされる、あまりに哀しい真実とは。

 

著者の生馬直樹さんは、本作でデビューした新人作家さん。そのせいか荒削りな所もちらほらあるものの、読者を引きつける吸引力はかなりのものです。舞台となる田舎町の情景描写も臨場感たっぷりで、すんなりと物語の世界に入り込むことができました。

 

物語の中心となるのは、小学六年生の男子四人組。性格も家庭環境もばらばらの四人は、小学校生活最後の夏休み、夜中に地元の山に登る計画を立てます。そこに仲間の一人・国実の妹がついてきてしまったことが悲劇の始まりでした。様々な要因の積み重ねにより、幼い妹は不審な死を遂げてしまうのです。

 

一体なぜ妹は死んだのか、二十数年後に起こった殺人事件とどう繋がるのかという二点が、作中の主な謎。正直言って、この謎の答え自体は、さほど意外性のあるものではありません。にもかかわらず本作が面白いのは、子ども時代の描き方の巧みさゆえでしょう。実は互いに大好きというわけではないけれどつるみつづける子ども達、女子に比べて幼さの目立つ男子生徒間のヒエラルキー、問題児に対する大人たちの冷酷な視線などが、瑞々しい文章で丁寧に綴られています。成人後の子どもたちの性格の変化にもリアリティがあり、「年を取るってこういうことだよな」と思わされました。

 

調べてみたところ、生馬直樹さんは現在三十三歳。まだまだお若くパワーもあるでしょうから、この調子で良作を書き続けてほしいものですね。今後、どんなジャンルの作品を生み出してくれるのか、非常に楽しみです。

 

子どもの軽率さの代償はあまりに大きい度★★★★☆

でも一番の原因は大人にある度★★★★★

 

こんな人におすすめ

哀愁漂う青春小説が読みたい人

スポンサーリンク

コメントを残す


CAPTCHA