はいくる

「皇妃エリザベート」 藤本ひとみ

クレオパトラ、楊貴妃、小野小町・・・歴史上、絶世の美女と称えられる女性は大勢います。中には、美貌が原因で国を傾けてしまった女性も少なくありません。でも、その中でちゃんと顔が分かる女性となると、けっこう少ないですよね。

写真が現存している美女と言えば、この人を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。今日紹介するのは、元厚生省職員という経歴を持つ藤本ひとみさん「皇妃エリザベート」です。

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輝く美貌と自由奔放な精神を持つバイエルン公女・エリザベート。故郷で伸び伸びと暮らすエリザベートだが、従兄であるオーストリア=ハンガリー帝国皇帝フランツ・ヨーゼフに見初められ、皇后となったことで運命が動き出す。窮屈な宮廷生活、多忙すぎる夫、姑との対立・・・それらの苦悩から逃れるため、エリザベートは自らの美貌を磨くことに執念を燃やし、やがてウィーンを離れ流浪の日々を送るようになる。自由を求めて流離う女性の生き様を描いた歴史浪漫小説。

 

「ハプスブルク家史上最高の美女」と呼ばれるだけあって、写真で見るエリザベートは本当に綺麗。美貌に恵まれ、皇帝に見初められるというシンデレラストーリーを歩む彼女が、なぜ夫や子供たちと離れ旅から旅への生活を送ることになったのか。本作では、その過程をとても丁寧に描いています。

物語冒頭では天真爛漫とした少女だったエリザベートが、悩める人妻となり、母となり、かつていがみ合った姑の心境を思いやる場面は、何だか感慨深いです。願わくば、その理解がもう少し早ければ・・・エリザベートの運命はもっと違ったものになっていたのかもしれません。

この時代のヨーロッパ情勢はけっこうややこしく、苦手と感じる方も多いようですが、心配はご無用。もともと少女小説を書いていた作家さんらしい、柔らかく軽快な文章のせいか、複雑な国名や人名もすんなり頭に入ってきます。当時のファッションや化粧に関する描写も細かく、特に女性の興味を引きそうですね。

また、本作はキャラクター設定もなかなか魅力的。エリザベートの夫であり、勤勉実直な皇帝フランツ・ヨーゼフはもちろんのこと、帝国の権威を守るためエリザベートと対立する姑・ゾフィー大公妃、エリザベートと同じく美貌に恵まれながら精神を病んでいくルードヴィヒ二世など、実在の人物がとても活き活きと描かれています。

その美貌と境遇から、小説・映画・舞台など、様々な創作物のテーマとなっているエリザベート。日本では、宝塚のミュージカルも有名です。色々と見比べ、自分なりのエリザベート像を模索してみるのも楽しいのではないでしょうか。

 

シンデレラにも苦労はある度★★★★☆

ヨーロッパの歴史は面白い度★★★☆☆

 

こんな人におすすめ

・女性目線の歴史小説が好きな人

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コメント

  1. しんくん より:

    時代的にマリー・アントワネットやナポレオンの妻ジョセフィーヌと同じ時代~中世ヨーロッパの女性のストーリーですね。
    宝塚やミュージカルになりそうな歴史を背景にしたストーリー~楽しみな作品です。

    1. ライオンまる より:

      実際、ミュージカルになってるんですよ。
      私は観たことありませんが、毎回大物俳優がキャスティングされる人気作みたいですね。
      この時代の作品は、悲劇であってもどこかしら華がある気がします。

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