はいくる

「怪談のテープ起こし」 三津田信三

「実話系ホラー」というジャンルがあります。その名の通り、「実際の出来事であるかのような体裁のホラー」のことで、貞子やジェイソンのような目に見える化け物が登場することはほとんどない代わり、日常をじわじわと浸食するかのような恐怖感があります。最近では、映画化もされた小野不由美さんの「残穢」などがありましたね。

実話系ホラーの場合、リアリティはある反面、一歩間違えるとヤマもなければオチもなく、怖くも何ともない話になってしまうことが特徴です。ですが、今日ご紹介する作品に関しては、そういう心配は無用ではないでしょうか。実話系ホラーを書かせたら国内随一(と私が勝手に思っている)の三津田信三さん「怪談のテープ起こし」です。

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自殺者が残したテープを聞いた男の運命、とある家で一晩留守番を頼まれた女子大生を待つ恐怖、雨の日に現れる全身黄色一色の女の正体・・・・・かつて見聞きした怪談話をまとめて本にしようとする作家・三津田信三。そんな三津田のため、編集者の時任は、怪談が収録されたテープを文章に書き起こす役目を引き受ける。だが、作業が進むにつれ、時任の身辺で次々と異変が・・・・・テープ起こしが引き起こす恐怖の顛末を描いた、戦慄の怪異譚。

 

「これ、フィクションですよね?」と恐る恐る確認したくなるほど臨場感のある怪談話の数々。よくもまあこれだけリアリティたっぷりに恐怖を描けるなと、毎度のことながら感心してしまいます。作者の「三津田信三」が実名で登場すること、著作や会社名などもすべて実在のものであることが、よりいっそう作品の不気味さに拍車をかけていました。

 

本作は、三津田が集めた怪談話六話と、そのテープ起こしが進むにつれて巻き起こる怪奇現象を描いた「序章」「幕間」「終章」という二つの構成から成っています。どちらを怖いと感じるかは人それぞれでしょうが、私としてはやはり、粒揃いの怪談六話に注目してしまいますね。

 

「自殺者たちが残した最後のメッセージを集め、原稿にする」というショッキングな企画を提案した男は、一体何を見聞きすることになるのか(「死人のテープ起こし」)。高額のアルバイト料に惹かれて留守番役を引き受けた女子大生に迫りくる恐怖の正体とは(「留守番の夜」)。正気を失ったように見える老人が語る、過去に起こった戦慄の出来事(「屍と寝るな」)etcetc。どの話もレベルが高く、膨らませて一本の長編ホラーにしてほしいと思うほどです。

 

三津田信三さんのホラー作品に共通して言えることですが、怪異はあくまで怪異であり、謎解きや因果関係を求めてはいけません。正直、「真相が分かってスッキリ解決」というパターンを求めて読むと、尻切れトンボだと感じる可能性が高いと思います。その点さえ割り切って読めば、古き良き日本の怪談話を心行くまで味わえるはずですよ。

 

本当はノンフィクションじゃないのか度★★★★★

テープを再生するのが怖くなる度★★★☆☆

 

こんな人におすすめ

・実話系ホラーが好きな人

・日本独特のじっとりした恐怖感を味わいたい人

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コメント

  1. しんくん より:

    テープ起こしのホラーというのが面白そうです。
    MDでさえ時代遅れ、ボイスレコーダーやスマホ、携帯で簡単の録音できる時代にテープをテーマにしたホラー、興味を惹かれます。ミステリーではなくて日本の昔の怪談なんですね。

    1. ライオンまる より:

      この時代にあえて「テープ起こし」というところが、恐怖を倍増させるんですよ。
      三津田信三さんのホラーの場合、「オチが不明瞭」という点で賛否が分かれるようですが、私はこういう雰囲気大好きです。
      怪談好きならハマると思いますよ。

  2. 匿名 より:

    今読んでいますが、リアルなようでオチがはっきりしない展開がストーリー以上に気になります。ホラーかどうかも微妙な曖昧さが何となく引っかかります。

    1. ライオンまる より:

      三津田信三さんの場合、「はっきりした推理のあるホラー風ミステリー」と「あえて明確な回答を出さない実話風怪談」の二種類があるんですが、これは後者ですね。
      私は怪談好きなので雰囲気を楽しみましたが、苦手な人も結構いるようです。

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