はいくる

「沈黙の教室」 折原一

ちょっと寂しい話ですが、私は同窓会にほとんど出たことがありません。小学校から大学まで、仲の良い友達数名と個人的に会いはするものの、クラス全体で集まった機会は数えるほど。幹事を決めずに卒業したり、取りまとめ役だった子が遠方に引っ越したりしたことが原因かもしれませんね。

かつて同じ教室で学んだ仲間たちが集まり、旧交を温め合う同窓会。和気あいあいと思い出話で盛り上がれれば、これほど楽しいものはないでしょう。ですが、もし同窓会に集う仲間たちに恨みを抱く者がいれば?そして、同窓会に乗じ、過去の復讐を企んでいたとしたら・・・?そんな復讐劇を描いたサスペンス小説をご紹介します。叙述トリックの名手として有名な折原一さん『沈黙の教室』です。

 

スポンサーリンク

 青葉ヶ丘中学校の三年A組で秘密裏に発行され、名指しされた者が次々に粛清されていく「恐怖新聞」。二十年後、交通事故に遭いかけて記憶喪失になった男が所持していた、青葉ヶ丘中学校三年A組の生徒を皆殺しにする計画書。果たして男は何者なのか。かつて三年A組だった生徒たちが、次々と不審死を遂げていくのは偶然か。そして、かつて陰湿ないじめの原因となっていた「恐怖新聞」の仕掛け人とは・・・・・どんでん返しの末の真相を描いたサスペンス小説の傑作。

 

七〇〇ページ近い大作ながら、中だるみせず一気に読ませる筆力はさすが!過去と現在が交錯し、視点もころころ変わるものの、テンポの良さと良い意味で軽い文章のおかげで、ラストまでページをめくる手が止まりませんでした。けっこう登場人物も多いのにこの読みやすさ。元編集者だという作者の力量が遺憾なく発揮されていると言えるでしょう。

 

あまりの読みやすさについ忘れそうになりますが、話の内容自体はかなり陰湿で重苦しいものです。かつて中学校の一クラス内で横行していたいじめ、対処しきれず右往左往する学校関係者、追い詰められて学校を去る者、自ら命を絶つ者・・・この辺りの、中学校という独特の空間が持つ閉塞感や、大人には理解できないティーンエイジャーの不気味さなどの描写の凄みといったら。そこに、発行者不明のまま出回る「恐怖新聞」という要素が加わることで、ホラー的な雰囲気も醸し出されています。

 

それにしても、分かりきったことですが、いじめとは残酷なものですね。いじめという行為そのものはもちろん、後年、いじめた側は過去をすっかり忘れて「いい思い出」とし、いじめられた側はいつまでも心身の傷に苦しみ続ける。途中、三年A組の卒業生たちが過去を振り返る場面があるのですが、各自の温度差、出来事のとらえ方の違いには驚かされます。「恐怖新聞」などより、こういう人間心理の方がよっぽど「恐怖」と言えるのではないでしょうか。

 

ミステリーというよりはホラーサスペンス寄りの作品であり、「密室」「アリバイ」といったロジカルなトリックが好きな方には物足りないかもしれません。ですが、著者お得意の叙述トリックはしっかり仕掛けられていますし、姿の見えない復讐者に対するじわじわした恐怖は一読の価値ありです。調べたところ、本作には続編『暗闇の教室』があるそうなので、こちらも早急に読みたいですね。

 

全部過ぎたことだよね度★☆☆☆☆

怪しい人物のオンパレードだよ度★★★★☆

 

こんな人におすすめ

ホラー風味のサスペンス小説が好きな人

スポンサーリンク

コメント

  1. しんくん より:

    かなりの大作ですが面白そうです。
    同窓会のストーリーは結構読んだと思いますが、これは一味違う深い事情を感じます。
    同窓会はテーマにしやすいのか、ヒューマンドラマやミステリーに展開して面白いですが、白夜行のような長い展開でのオチが楽しみです。
    奥さんの新津きよみさんのような女性の心理の描写もあるかも。
    図書館で探してきます。

    1. ライオンまる より:

      同じく、同窓会ものは色々読みましたが、これはかなりインパクトありました。
      新津さんのねっとりとした女性心理描写とはまた違う、ライトでいながら読み応えのある文章が印象的です。
      いじめがテーマということもあり、さらりと読めるような内容ではありませんが、オススメですよ。

コメントを残す


CAPTCHA