柚木麻子

はいくる

「終点のあの子」 柚木麻子

どんな物事であれ、最初の一歩は大事です。最初の外食、最初の登校、最初のデート、最初の出勤・・・結果が成功するにせよ失敗するにせよ、その人にとって印象に残る出来事であることは間違いありません。

小説家にとって最初の一歩、それはデビュー作です。プロとしての人生を歩み出した記念作なわけですから、小説家本人だけでなく、読者からしても印象的な作品であることが多いですよね。この方のデビュー作も、初読みから何年経っても強く印象に残っています。柚木麻子さん『終点のあの子』です。

 

こんな人におすすめ

女子高生のもどかしい人間模様を描いた青春小説が読みたい人

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「王妃の帰還」 柚木麻子

女子校という言葉を聞いて、どんなイメージが思い浮かぶでしょうか。お嬢様達が優雅に微笑み合う女の園か。あるいは、大奥ばりの権謀術数が渦巻く伏魔殿か。実際に女子高出身の私に言わせれば、どちらも否。共学校と同じく、楽しいこともあれば嫌なこともある、普通の学校です。ただ、同世代の異性の目がない分、女の良い所悪い所がより強調されるという面はあると思います。

私は女同士の人間模様をテーマにした作品が大好きなので、女子校を舞台にした小説もたくさん読みました。秋吉理香子さんの『暗黒女子』、今邑彩さんの『そして誰もいなくなる』、若竹七海さんの『スクランブル』等々、どれも面白かったです。例に挙げたのは、どちらかというとブラックな味わいの作品ばかりなので、今回は後味の良い青春小説を取り上げたいと思います。柚木麻子さん『王妃の帰還』です。

 

こんな人におすすめ

波乱万丈な女子中学生の青春小説を読みたい人

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「マジカルグランマ」 柚木麻子

創作作品を見ていると、「このキャラってステレオタイプだよね」と思うことがあります。たとえば<日本人>なら<努力家で慎み深く、自己主張が苦手>とか、<田舎者>なら<流行に疎く方言丸出しで喋り、お節介だが人情味がある>とか。現実には怠け者ではっきり物を言う日本人も、お洒落でクールな田舎者も大勢いるに決まっていますが、なんとなくこういうイメージが付いてしまっています。こういう固定観念やレッテルのことを<ステレオタイプ>と言います。

映画や小説などを創る上で、このレッテルは役立つこともあります。分かりやすいキャラクターがいた方が物語が盛り上がるという側面も確かにあるでしょう。ただし、一つのイメージがあまりに浸透することで、そのイメージ通りに動かない人達が嫌な思いをさせられるというマイナス面もあります。はっきり自己主張しただけで「日本人なのに我が強い」などと言われたら、誰だって不愉快な気持ちになりますよね。この作品を読んで、物事にレッテルを貼ることの意味を考えさせられました。柚木麻子さん『マジカルグランマ』です。

 

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シニア世代の奮闘記が読みたい人

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「けむたい後輩」 柚木麻子

記憶にある限り、今まで生きてきて「先輩」と言われたことはほとんどありません。中学校の部活では新入部員が入って来ず、高校は私が帰宅部。社会人になってからは後輩ができたものの、会社では「名字+さん」呼びが一般的でした。別に不自由はありませんでしたが、可愛い後輩に「先輩、先輩」と慕われるというシチュエーションには憧れちゃいますね。

小説の世界にはたくさんの先輩後輩が登場します。有栖川有栖さんの『学生アリスシリーズ』は頼もしい先輩が登場する青春ミステリ、秋吉理香子さんの『暗黒女子』は美しい女子高生を巡る愛憎劇を描いたイヤミス、森見登美彦さんの『夜は短し歩けよ乙女』は後輩に恋した大学生が主人公の恋愛小説です。どの先輩後輩の関係性も様々、愛や尊敬や信頼もあれば、憎しみや嫉妬や軽蔑もありました。では、この作品に出てくる先輩後輩はどうでしょうか。柚木麻子さん『けむたい後輩』です。

 

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ほろ苦い成長物語が読みたい人

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「ねじまき片想い~おもちゃプランナー・宝子の冒険~」 柚木麻子

おもちゃが大嫌いという人ってあまりいない気がします。「テレビゲームは苦手」「パズルは好きじゃない」などという好みはあるにせよ、誰しもお気に入りだったおもちゃの一つや二つあるでしょう。かくいう私も子どもの頃はおもちゃ屋さんに行くのが大好き。今でさえ、時間がある時は、ショッピングセンターのおもちゃ売り場をぶらぶら歩くくらいです。

子どもを、時には大人をもワクワクさせるおもちゃの数々。一体どんな人が、そんなおもちゃを考え出しているのでしょうか。今回は、魅力的なおもちゃの作り手が登場する作品を取り上げたいと思います。柚木麻子さん『ねじまき片想い~おもちゃプランナー・宝子の冒険~』です。

 

こんな人におすすめ

元気をもらえるお仕事・恋愛小説が読みたい人

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「私にふさわしいホテル」 柚木麻子

こんなブログをやっているだけあって、私は文章を読むのも書くのも好きです。昔は「小説家になりたいな」と思い、自作の小説をちまちま書いてみたりもしました。その内、書くより読む専門でいる方がいいと思うようになりましたが、ふと思いついた物語をあれこれ捏ね繰り回すのは結構面白かったです。

ですが、プロの作家にしてみれば、創作という行為は単純に「面白い」で済むものではないでしょう。物語に破綻がないよう細心の注意を払い、時代のニーズを考え、時には自ら営業活動を行って作品が多くの人に読んでもらえるよう努める。そして、それだけの努力を積み重ねても、作品が見向きもされないこともある。それがクリエイターの背負う宿業です。そんな小説家の悪戦苦闘を描いた作品といえばこれ、柚木麻子さん『私にふさわしいホテル』です。

 

こんな人におすすめ

文壇の悲喜こもごもを描いたコメディ小説が読みたい人

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「さらさら流る」 柚木麻子

携帯電話やスマートフォンを持つようになって以来、写真を撮る機会がぐっと増えました。わざわざカメラを引っ張り出す必要がないわけですし、撮影後の編集も簡単にできるんですから、当然と言えば当然ですね。自他ともに認める甘党ということもあり、スイーツを買った時は食べる前に写真撮影しておくのが習慣です。

こんな風に誰でも手軽に写真撮影できるようになると、それによる危険も発生します。何の気なしに撮り、インターネット上にアップした写真に、個人を特定できる情報が写っているかもしれない。あるいは、自分でなくとも他人にとって撮られたくない瞬間かもしれない。もしそうだった場合、そんな写真をネットに公開した時のダメージは計り知れません。今回は、一枚の写真がもたらす苦しみをテーマにした作品を紹介します。柚木麻子さん『さらさら流る』です。

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「BUTTER」 柚木麻子

バターたっぷりの料理は美味しいです。最近はバターを使わず、カロリーカットした

レシピが多いようですが、それだと時々物足りなくなりませんか?どちらかと言えばあっさり系の味が好きな私でさえ、たまにはバターをふんだんに使ったパスタやお菓子が食べたくなります。

とはいえ、バターの使い過ぎにはご用心。あまりに濃厚すぎる味わいの虜となり、後々後悔する羽目になったりして・・・そんな運命に陥った女性を描いた作品がこちら。柚木麻子さん『BUTTER』です。

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「奥様はクレイジーフルーツ」 柚木麻子

夫婦関係を続けるに当たって、一番大事なものって何でしょうか。恋愛感情?信頼関係?経済力?聞く人ごとに、違った答えが出てきそうです。

そして、夫婦生活を考える上で切っても切り離せないのが、ズバリ、セックス問題。もし、夫婦間で性生活がなくなってしまったら?答えの出ないセックスレス問題について描いているのが、柚木麻子さん「奥様はクレイジーフルーツ」です。

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