乃南アサ

はいくる

「氷雨心中」 乃南アサ

修練を積み重ねた末にできるようになる巧みな技のことを<職人技>といいます。こんな言葉ができることからも分かる通り、職人とは熟練した技術で物を生み出すプロフェッショナル。根っからの不器用人間である私からすれば、同じ人間とは思えないレベルの技術を持った人達です。

ただ、職人をテーマにした小説となると、有名なのは専ら時代小説。現代小説となると意外に少ない気がします。特殊技術を用いる仕事である関係上、活躍する場面が限定され、物語にうまく絡めることが難しいせいでしょうか。確かに、せっかく職人がテーマなのだから、その技巧が作中で活かされていないと意味がありません。そんな中、この作品では、職人達の持つ技と業が巧みに描かれていました。乃南アサさん『氷雨心中』です。

 

こんな人におすすめ

職人の世界をテーマにしたサスペンス短編集が読みたい人

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はいくる

「暗鬼」 乃南アサ

「結婚においては本人同士の気持ちが一番大事」「相手の家族なんて関係ない」。昨今ではこういう考え方が主流だと思います。もちろん、それも一つの真理なのでしょうが、やはり揉め事は少ない方が有難いもの。配偶者の家族が善人で、結婚後も円満に付き合っていけるなら、これほど嬉しいことはありません。

人類誕生時からの不変のテーマだからか(大袈裟?)、義実家とのあれこれを描いた小説はたくさんあります。伊坂幸太郎さんの『シーソーモンスター』や群ようこさんの『それ行け!トシコさん』では義家族との果てなきバトルが、山口恵以子さんの『食堂のおばちゃんシリーズ』では支え合う嫁姑の絆が、当ブログでも取り上げた小池真理子さんの『唐沢家の四本の百合』では魅力的な舅を中心とした愛憎劇が描かれました。では、この小説ではどうでしょうか。乃南アサさん『暗鬼』です。

 

こんな人におすすめ

家族の秘密をテーマにしたサスペンスが読みたい人

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はいくる

「トゥインクル・ボーイ」 乃南アサ

サスペンスやホラーにおける子どもの役割は、大抵二分されます。登場人物達に未来や希望を感じさせる清涼剤的存在か、子ども特有の残酷さや凶暴さを発揮する恐怖の対象か。どちらも面白いですが、イヤミス大好きな私としては、後者の子どもに惹かれてしまいます。

とはいえ、いつもいつも映画『オーメン』のダミアンのように超自然的な力で大人を殺害していく子どもばかりでは食傷してしまうというもの。冷酷さや大胆さだけでなく、幼稚さや浅はかさがあってこその子どもです。そんな子どもの恐ろしさを描いた作品といえばこれ、乃南アサさん『トゥインクル・ボーイ』です。

 

こんな人におすすめ

子どもが抱える闇をテーマにした短編集が読みたい人

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「紫蘭の花嫁」 乃南アサ

「将来の夢はお嫁さん」・・・実際にそう口にしたり、誰かがそう言っているのを見聞きしたことはあるでしょうか。一昔前まで女性はお嫁にいくのが当然と思われていましたし(今でもそういう考えがないとは言いませんが)、最近は妊娠出産のことを考えて早めの結婚を目指す女性も増えているそうです。美しいウェディングドレスや白無垢に身を包んだ花嫁は、幸福と希望の象徴ですね。

ですが、小説の世界において、花嫁という存在は時に事件のきっかけとなり得ます。日常とかけ離れた美しさや存在感がそうさせるのでしょうか。赤川次郎さんの『花嫁シリーズ』や辻村深月さんの『本日は大安なり』などには事件に巻き込まれる花嫁が登場しますし、コーネル・ウールリッチの『黒衣の花嫁』は世界的な人気を誇る名作です。今回取り上げる作品にも、謎に満ちた花嫁が登場します。乃南アサさん『紫蘭の花嫁』です。

 

こんな人におすすめ

シリアルキラーが登場するスリリングなミステリーが読みたい人

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「ウツボカズラの夢」 乃南アサ

ウツボカズラという植物をご存知でしょうか。東南アジアに多い食虫植物で、甘い蜜を餌に虫をおびき寄せ、壺のようになった体内に誘い込んで捕食するという習性を持っています。昔、テレビでウツボカズラの内部を調べるという企画を見たことがありますが、凄まじい数の虫を体内にため込んでいて驚いたものです。

甘い蜜をちらつかせてターゲットを誘い、食らいついて自分のものにしてしまうウツボカズラ。この生態から、ウツボカズラはしばしばフィクションの世界で「悪女」の象徴として登場します。最近の作品では、これを覚えている方が多いのではないでしょうか。二〇一七年に志田未来さん主演でドラマ化もされた、乃南アサさん『ウツボカズラの夢』です。

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「結婚詐欺師」 乃南アサ

保険金詐欺に催眠商法、振り込め詐欺に寸借詐欺・・・この世には、たくさんの詐欺が存在します。人を騙して金品を奪い、損害を与える憎むべき犯罪行為です。そして、どれだけ世が移り変わろうと、決してなくならない犯罪でもあります。

一体なぜ人は詐欺師に騙されるのか。詐欺師はいかにして人の心を欺くのか。今日は、結婚詐欺について取り上げられた本を紹介しようと思います。直木賞受賞作家、乃南アサさん「結婚詐欺師」 です。

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