長江俊和

はいくる

「掲載禁止」 長江俊和

一月も後半。今年度も残りわずかです。学校も職場も、今年度の締めくくりと新たな年度への準備で、何かと気忙しくなる時期でしょう。昔の人は十二月を<師走(いつも沈着なお坊さんでも走り回るくらい忙しい時期)>と表現しましたが、個人的には今くらいの時期が一番慌ただしい気がします。

だからといって読書をやめられないのが本好きの性。とはいえ、仕事や勉強が多忙なら、読書に割く時間は減りがちになります。こういう時は、一話一話が独立していて、空き時間に読み進められる短編集がお勧めです。先日は、この短編集を読みました。長江俊和さん『掲載禁止』です。

 

こんな人におすすめ

どんでん返しのあるサイコサスペンス短編集が読みたい人

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「出版禁止 いやしの村滞在記」 長江俊和

新年明けましておめでとうございます。二〇一六年に開設した当ブログは、あと数カ月でめでたく六年目を迎えます。開始当初は、三日坊主になるのではないか、ちょっと不安だったものですが、閲覧してくれる皆様のおかげでここまで続けることができました。相変わらず趣味丸出しの偏ったレビューサイトになると思いますが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

毎年、その年最初の記事を書くたび、「新年くらいすっきりハッピーエンドのおめでたい小説を取り上げよう」と思うものの、なかなか実現していないのが現状です。ハッピーエンドの話も大好きなのですが、振り返ってみると、なぜかイヤミスやホラー寄りの読書歴になっているんですよね。それがこのブログの特色ということで、二〇二二年一発目はこの小説にしようと思います。長江俊和さん『出版禁止 いやしの村滞在記』です。

 

こんな人におすすめ

ルポルタージュ風のどんでん返しミステリーが読みたい人

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「出版禁止」 長江俊和

<心中>とはもともと<真心>を意味する言葉であり、転じて<男女が相手に真心を尽くし、愛を貫くこと>を意味するようになったそうです。それがさらに変化し、何物にも邪魔をされない究極の愛の行為として、男女が一緒に死ぬことを指すようになったんだとか。一家心中、無理心中、ネット心中など、一言で<心中>と言っても様々ですが、言葉のイメージとして一番世間に浸透しているのは、上記のケースだと思います。

かつては幕府が厳しく禁じるほど社会的注目を集めたテーマであり、必然的に心中を扱った作品もたくさん生まれました。江戸時代には<心中物>というジャンルが存在しましたし、現代でも石田衣良さんの『親指の恋人』や渡辺淳一さんの『失楽園』というように、心中がキーワードとなった小説は多いです。そして、恋愛小説では恋人同士の愛の形として扱われる<心中>ですが、ミステリーやホラーだと今後の事件への布石となるパターンが多いですよね。今回ご紹介するのは、長江俊和さん『出版禁止』。この方の謎の仕掛け方、やっぱり好きだなぁ。

 

こんな人におすすめ

ノンフィクション風ミステリーが好きな人

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「出版禁止 死刑囚の歌」 長江俊和

自慢して言うようなことではありませんが、私は単純な人間です。物事の裏側を読んだり、水面下に秘められた事実を察するというのが苦手。おかげで昔からさんざん「鈍い」「KY」と言われたものです。

ですが、読書においては、鈍感さが役立ったこともあります。どんでん返しが仕掛けられた小説を読む時、作中の手がかりからオチを見抜くという器用さが全然ないため、真相判明時にはいつも特大のビックリを味わえるのです。綾辻行人さんの『十角館の殺人』や歌野晶午さんの『葉桜の季節に君を想うということ』の真相を知った時なんて、本当に「ええーっ!?」と声に出して驚いたものだっけ。今回ご紹介する作品にも、世界がひっくり返るようなどんでん返しが用意されていました。長江俊和さん『出版禁止 死刑囚の歌』です。

 

こんな人におすすめ

・ノンフィクション風ミステリーが読みたい人

・どんでん返しが仕掛けられた小説が好きな人

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「東京二十三区女」 長江俊和

東京二十三区。それは日本最大級の人口を擁する街であり、世界に名だたる大都市です。閑静な高級住宅街や日雇い労働者が住むドヤ街、若者に人気のプレイスポットなど、性別も年齢も違う人々が絶えず行き交っており、まさに日本の中心部の一つと言えるでしょう。

それだけの大都市であるからには、当然そこに至るまでの歴史があります。その歴史とは、華やかで生き生きしたものばかりとは限らないかも・・・今日ご紹介するのは、東京の闇の奥に眠る秘密を描いた作品です。ディレクターや脚本家、映画監督など様々な顔を持つ長江俊和さん「東京二十三区女」です。

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