はいくる

「青光の街(ブルーライト・タウン)」 柴田よしき

イギリスの女流作家、P・D・ジェイムズの著作に『女には向かない職業』という推理小説があります。この職業というのは「探偵」のこと。知力だけではなく、体力や筋力が求められることも多いであろう探偵稼業は、「女性には向かない」と思われがちだったのかもしれません。

とはいえ、そんな考え方があったのはもう昔の話。今や現実世界でもフィクションの中でも優秀な女探偵は数えきれないほど存在しますし、『女には向かない職業』の主人公も女性です。最近、魅力的な女探偵が登場する小説を読んだので紹介します。柴田よしきさん『青光の街(ブルーライト・タウン)』です。

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旧友から送られてきた「助けて」というメール。タレントと婚約中の女性から受けた身辺調査の依頼。OL、男性会社員、中学生が犠牲となった、死体の傍に青い電飾が置かれる連続殺人事件・・・・・作家兼探偵社所長・草壁ユナの周りで巻き起こる事件の数々。一見無関係なそれらが絡み合い、収束し、やがて驚愕の真相が暴かれる。探偵小説の王道を行く、手に汗握るノンストップ・サスペンス。

 

ヒロインである草壁ユナのキャラクターがなかなかユニーク。私立探偵が主役の小説の場合、探偵は個人行動を好むアウトロータイプで、調査中に胡散臭い目で見られてしまうこともしばしばです。ところが、ユナは探偵社の所長であると同時に職業作家であり、しっかりした社会的基盤と経済力を持っています。部下には優秀な探偵や事務員がいて、彼らを的確に采配することで謎を解決しようとします。金も地位もそれなりにあり、経営者の立場から真相解明を目指す女探偵って、今まであまりいなかったのではないでしょうか。

 

作中で起こる主な事件は「ユナの友人の失踪」「タレントである婚約者の身辺調査依頼」「遺体の横に青い電飾を置く連続殺人」という三つです。どう考えても無関係なそれらが徐々に絡み合っていく様子はスリリングで、テンポ良く一気読みできました。何と言っても、登場人物の多くが抱えるエゴや狂気の描写が秀逸。ラスト、とある人物の本性が見えるシーンなど、その場を想像して思わずゾッとしてしまったり(汗)

 

事件が多い分、登場人物も多く、視点もころころと変わってめまぐるしいものの、文章が平易なせいか、読みにくさを感じることはあまりないと思います。冒頭に登場人物一覧が付いているのも、読者に親切で良いですね。ちなみに一覧に載っている登場人物は全部で三十人以上。これだけの人数を混乱なく書き切るわけですから、やっぱり柴田さんは巧い作家さんなんだなと、しみじみ実感してしまいました。

 

本のあらすじには「作家にしてブルーライト探偵社の所長の草壁ユナ、最初の事件」とあります。ユナ以外にも、ユナと微妙な関係を続けるボーイフレンド、ド派手なルックスの同業者、優秀だが一癖ありそうな部下など、今後の動向が気になる登場人物がたくさんいます。「<最初の>事件」という作者の言葉を信じ、続編が出るのを楽しみに待とうと思います。

 

謎の連続でボリューム感たっぷり度★★★★☆

まさかあの人に裏があるなんて!度★★★★☆

 

こんな人におすすめ

・正統派の探偵小説が読みたい人

・女探偵が出てくる小説に興味がある人

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