はいくる

「anego」 林真理子

年を重ねたら、周りからどんな呼ばれ方をしたいですか?女性相手に「おばさん」と呼びかけることが失礼だとはよく言われますが、男性だって、軽々しく「おじさん」と呼ばれたくはないですよね。皆から慕われ、年相応の敬意を払われる呼称―――――「姉御」「兄貴」なんて、けっこう嬉しいんじゃないでしょうか。

でも、不思議なもので、そうやって皆に頼られている人が、要領良く幸福になるとは限りません。むしろ、面倒見が良く賢い人だからこそ、貧乏くじを引いてしまうケースも多いはずです。今日はそんな女性をヒロインに据えた一冊、直木賞受賞作家である林真理子さん「anego」をご紹介します。

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大手商社に勤める独身OLのヒロイン・奈央子。一般職ながら仕事を的確にこなし、上司や同僚から頼られる彼女には「姉御」というあだ名が付いている。ある日、旅行先で一組の夫婦と知り合った奈央子だが、妻の悩みを打ち明けられた瞬間から、思わぬ愛憎劇へと足を踏み入れることになる・・・・・

 

篠原涼子さん主演のドラマの原作小説である本作。とはいえ、原作とドラマはずいぶん雰囲気が異なるので、知らずに読むとものすごい衝撃を受けるかもしれません。かくいう私もその一人で、最初読んだ時は「全然違うじゃないか!」とのけぞってしまいました。

 

サバサバと爽快だったドラマ版と違い、本作はドロドロした男女関係のオンパレード。ヒロインはイケメンの後輩と一夜を共にするも遊び相手扱いされ、好条件の男との見合いは相手の元恋人の出現で破談、ついには理想の男(既婚者)との不倫にのめり込んでいきます。ヒロインが知性も行動力もある女性である分、「なんでそういう方向に行っちゃうのよ!」と歯がゆくて歯がゆくて・・・この時点で、私は林真理子マジックにかかってしまっていたんでしょう。

 

また、ヒロイン以外の登場人物のキャラも個性豊かです。颯爽としたエリートと思いきや、徐々に男の愚かさを露呈していく不倫相手。ナイーブな性格のようでいて、予想外の執拗さを見せる妻、正直なんだか身勝手なんだかよく分からない後輩男子etcetc。彼らがとにかく強烈なので、ドラマ版のキャストを思い浮かべながら読むと、映像を見た時とはまた違う感想が生まれそうですね。

 

決してスッキリ爽快な話ではありませんし、ヒロインが不倫に走る辺り、嫌悪感を抱く読者もたくさんいるでしょう。ですが、三十代の複雑な女心の描写は抜群に巧く、考えさせられる部分も多いです。単行本の紹介文に「恋愛ホラー」と書いてあることを頭に入れた上で、じっくり読んでみてはいかがでしょうか。

 

ヒロインったら面倒見が良すぎる度★★★★★

原作とドラマの印象が違いすぎる度★★★★☆

 

こんな人におすすめ

・ままならない恋愛を扱った小説が読みたい人

・バブル後のOLの生活を垣間見たい人

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