はいくる

「あなたのゼイ肉、落とします」 垣谷美雨

すらりとした手足や引き締まった脇腹、魅力的に見えますよね。一昔前まで「ダイエット」といえば女性が気にするテーマでしたが、今は男性も体型管理に熱心な時代。ダイエットを助ける器具や食品もたくさんあります。

ところで、体に贅肉を付け、肥満することの何がそんなにいけないのでしょうか。ただ単に、見た目の美醜だけで済む問題なのでしょうか。この本を読んだ時、私は贅肉を蓄えることの問題点について改めて考えてしまいました。垣谷美雨さん「あなたのゼイ肉、落とします」です。

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自分をないがしろにする家族や同僚たちにうんざりする兼業主婦、名家というプライドに縛られる身内に抑圧される女子大生、交通事故による昏睡状態から目覚めたサラリーマン、多忙な母に寂しさを訴えられない小学生・・・・・様々な理由で肥満した男女の前に現れる女性・大庭小萬里(おおば こまり)。メディアには決して登場しない彼女が伝授する、「絶対に痩せられる方法」とは?体の贅肉よりなお悪い、「心の贅肉」の在り方を描いた爽やかなダイエット小説。

 

コミカルなタイトルや表紙のイメージとは違い、中身はけっこう辛辣かつクール。太った理由についてあれこれ言い訳する登場人物たちを、大庭小萬里がバッサバッサと論破していく様は、読んでいて身につまされるものがあります。この小萬里という女性が、一見太った冴えない中年女性ながら、実は肥満ではなく筋肉質なタイプという所も面白いですね。彼女がいかにもスポーティできびきびした女性だったら、この本の印象もずいぶん変わってきそうです。

 

本作は全部で四話から成る短編集で、四人の男女が各話の主役を務めます。「太っている」、言葉にすればただそれだけですが、彼らが太った理由は四者四様。共通しているのは、四人がそれぞれ大きな悩みを抱え、「心の贅肉」を蓄えてしまった結果、肥満したという点です。小萬里と出会うことで彼らが自分の悩みと向き合い、少しずつでも乗り越えようと奮闘する様子は、読んでいてとても爽やかでした。

 

と、こんな風に書くとシビアなばかりの小説のようですが、そこはやっぱり垣谷美雨。ユーモア溢れる軽妙な文章のおかげで、読者を暗い気持ちにさせません。第一話に登場する兼業主婦が、自分の体重は六十キロではなく五十九、八キロと言い張るところ。第二話の主役である女子大生が、本当に貧乏なのにも関わらず金持ち娘と誤解されてしまうところなど、クスリと笑える描写もふんだんにちりばめられています。毒親やシングル家庭の貧困問題といった深刻なテーマをもさらりと描ける、これがこの作者の持ち味ですね。

 

なお、最終話に小萬里の母親と姉に関する記述が少しだけありますが、この姉・大庭十萬里(おおば とまり)は姉妹作である「あなたの人生、片づけます」で活躍します。こちらは妹の小萬里と違い、片づけを通して人々を救っていくキャラクター。こうなると母親も何かしら隠し玉を持っていそうですし、ぜひともこの「大庭家シリーズ」が今後も続いていってほしいものです。

 

自分に自信を持ちましょう度★★★★☆

ダイエットがしたくなる度★★★★☆

 

こんな人におすすめ

・後味の良い成長物語が読みたい人

・ダイエットについて考えたことのある人

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コメント

  1. しんくん より:

    「あなたの人生片づけます」の続編~面白かったです。
    下手にいろいろなダイエットに挑戦するより太る原因を追及していく手法~感心しました。

    1. ライオンまる より:

      大庭姉妹シリーズ、面白いですよね。
      各自の太る理由や、それに対する解決方法に説得力がありました。
      こういうアドバイザーがいるなら、私も依頼してみたいです。

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